リンダ・ロンシュタットの70年代名盤を支えたセッションマン
Linda Ronstadt が1970年代に立て続けに放ったヒット作の背後には、 Peter Asher を中心とする制作チームと、 ロサンゼルスのトップ・セッションマン群がいた。 なかでも Waddy Wachtel と Russ Kunkel は、 2026年6月19日公開の 映画『イミディエイト・ファミリー』 の主人公でもある4人のうちの2人。 映画を観る前後の補助線として、Ronstadtの作品ごとに演奏者の違いを整理した。
Peter Asher と LA セッションマン人脈
Linda Ronstadt のサウンドを決定づけたのは、 『Heart Like a Wheel』(1974) 以降、長期にわたって彼女のプロデューサーを務めた Peter Asher。 Asher は James Taylor のマネジメントとプロデュースも担っており、 その人脈を通じて、Taylor のレコーディングを支えていた Danny Kortchmar / Russ Kunkel / Leland Sklar や、後に Ronstadt バンドの中心となる Waddy Wachtel といったセッションマンが、彼女の作品にも 自然と関わっていくことになった。 Andrew Gold、Kenny Edwards といった「ロンシュタット・バンドのレギュラー」たちと、 これらのセッションマンが組み合わさる形で、70年代後半の彼女のサウンドが形成されている。
『Heart Like a Wheel』『Prisoner in Disguise』── Andrew Goldの役割
『Heart Like a Wheel』(1974)では、Andrew Goldが複数の楽器を演奏し、歌を支える編曲にも重要な役割を果たした。 翌年の『Prisoner in Disguise』(1975)もPeter Asherが制作し、GoldらとともにMotown、country、同時代のソングライター作品へ選曲を広げた。 まずこの2枚を聴くと、後のWachtelを中心とするバンドとの違いを比べやすい。
『Hasten Down the Wind』── WachtelとKunkelの参加
Hasten Down the Wind(1976) は、Peter Asher プロデュースによる7作目。 第19回グラミー賞ベスト・ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス(女性)を受賞し、 女性アーティストとして3作連続のプラチナ認定を達成したとされる重要作。 Warren Zevon の表題曲、Karla Bonoff 提供の3曲などを取り上げており、 ギターには Waddy Wachtel、ドラムスには Russ Kunkel が参加している。Wachtel はこの後 Ronstadt の音楽的中核として、 レコーディングとツアーの両方で長く関わり続けることになる。
『Simple Dreams』── Rick Marottaのドラム
翌年の Simple Dreams(1977) は、ビルボード200で5週連続1位を記録した Ronstadt 商業的ピークの作品。 Fleetwood Mac の『Rumours』を首位から引き下ろしたことでも知られ、 シングル「Blue Bayou」と「It's So Easy」が同時にトップ5入りした。 ここでも Waddy Wachtel(ギター)、 Rick Marotta(ドラムス)、Kenny Edwards(ベース)、Don Grolnick(鍵盤)らが演奏を支える。 配信クレジットでも「It's So Easy」のドラムはMarottaと明記されている。 前作に参加したKunkelと区別して聴くと、同じプロデューサーやギタリストがいても、作品ごとにリズムの担い手が変わることが分かる。
映画では女性ヴォーカリストの声で語られる
『イミディエイト・ファミリー』には、Ronstadt 本人だけでなく、 Stevie Nicks、Carole King など、4人のセッションマンの仕事を 間近で見てきた女性アーティストが多数登場する。 インタビューは、レコードの参加クレジットとあわせて、 歌手と演奏者がどのように仕事をしたかを知る手がかりになる。
関連リンク
- ハブ記事:映画『イミディエイト・ファミリー』に登場する西海岸ロック名盤ガイド
- アーティスト記事:Linda Ronstadt
- アルバム記事:Heart Like a Wheel (1974)
- アルバム記事:Prisoner in Disguise (1975)
- アルバム記事:Hasten Down the Wind (1976)
- アルバム記事:Simple Dreams (1977)
参考資料と参加クレジット
- Recording Academy: Heart Like a Wheel — 7 Facts
- Rhino: Hasten Down the Wind
- Qobuz: Simple Dreams — レーベル提供の配信クレジット
参加者は作品ごとに異なります。『Hasten Down the Wind』のRuss Kunkelと、『Simple Dreams』のRick Marottaを分けて記載しています。