Eagles cover

Eagles

発売
1972年6月1日
レーベル
Asylum Records
プロデュース
Glyn Johns
ジャンル
Country Rock / West Coast Rock

Eaglesのセルフタイトル作『Eagles』は、1972年6月1日に発表されたデビュー・アルバム。一言でいえば、4人の異なる歌声と作風を、カントリーロックとコーラスで一つにまとめた出発点である。

録音はロンドンのOlympic Studiosで行われ、Glyn Johnsがプロデュースを担当した。「Take It Easy」「Witchy Woman」「Peaceful Easy Feeling」の3曲が全米トップ40入りし、アルバムはBillboard 200で22位を記録。後年の緻密なロック・サウンドよりも、Bernie Leadonのバンジョーやギターを生かした素朴なカントリー色が前に出ている。

まず押さえたい3点

  • 音の特徴: アコースティック・ギター、バンジョー、簡潔なリズム、複数のリードボーカルを生かした初期カントリーロック。
  • まず聴く3曲: 開放感のある「Take It Easy」、Don Henleyが歌う「Witchy Woman」、Glenn Freyの穏やかな「Peaceful Easy Feeling」。
  • おすすめする人: 『Hotel California』以前のEaglesと、ロサンゼルスのカントリーロック人脈を知りたい人。

なぜ聴く価値があるのか

本作を聴く価値は、完成されたEagles像ではなく、4人の個性がまだはっきり分かれている点にある。Glenn Freyは親しみやすいロックとポップ、Don Henleyは緊張感のある歌、Bernie Leadonはカントリーとブルーグラス、Randy Meisnerは高い声と内向的な曲を持ち込んだ。

後のアルバムではFreyとHenleyが作曲とリードボーカルの中心になるが、ここではLeadonとMeisnerも複数の曲を歌っている。一枚の中で声が交代するため、バンドが一人のフロントマンではなく、異なる経歴を持つ4人の集合体として始まったことが分かる。

ヒット3曲だけでも入口になるが、「Train Leaves Here This Morning」「Most of Us Are Sad」「Take the Devil」まで聴くと、初期Eaglesが持っていたカントリー、フォーク、ロックの幅が見えてくる。

ロンドンで整えた南カリフォルニアの音

南カリフォルニアを代表する作品でありながら、録音場所はロンドンだった。Rolling Stones、The Who、Led Zeppelinなどの録音で知られるGlyn Johnsは、音数を増やすより、楽器の分離とボーカルの重なりを明瞭にする方向で4人をまとめた。

その結果、ギターは左右に広がっても演奏は混み合わず、コーラスの各声部を聴き取りやすい。「Take It Easy」の軽快さ、「Peaceful Easy Feeling」の静けさ、「Witchy Woman」の重いリズムが同じアルバムに入っても、録音の質感によって一つにまとまっている。

Johnsの制作は、Bernie Leadonが持ち込んだカントリー色とも相性がよかった。次作『Desperado』まで続く初期サウンドの基本は、このロンドン録音で形になった。

4人の声と作曲の違い

Glenn Freyは「Take It Easy」「Chug All Night」「Peaceful Easy Feeling」でリードを取り、アルバムの親しみやすい入口を担う。「Most of Us Are Sad」もFrey作だが、歌はRandy Meisnerに任せており、作曲者と歌い手を固定しない初期の柔軟さが見える。

Don HenleyはBernie Leadonとの共作「Witchy Woman」と、Jackson Browne作「Nightingale」を歌う。後年の代表曲に通じる張りのある声はすでに聞けるが、この時点ではドラムを叩きながら歌うメンバーの一人という位置づけである。

LeadonはGene Clarkとの共作「Train Leaves Here This Morning」と「Earlybird」、Meisnerは「Take the Devil」と「Tryin’」でそれぞれ前に出る。4人全員の声を順に聴けることが、本作と後年のEaglesを分ける大きな特徴である。

代表曲と聴きどころ

Take It Easy

Eaglesの出発点を最も分かりやすく伝える曲が「Take It Easy」である。Jackson Browneが書き始め、同じ集合住宅に住んでいたGlenn Freyが仕上げた共作で、Freyがリードボーカルを担当した。全米12位に入り、バンド最初のトップ20ヒットとなった。

アコースティック・ギターから始まり、コーラスとBernie Leadonのバンジョーが加わる構成は、ロックの推進力とカントリーの軽さを同時に示す。Eaglesを初めて聴く場合にも最も入りやすい一曲である。

Witchy Woman

明るい「Take It Easy」と対照を作るのが、Don HenleyとBernie Leadonの共作「Witchy Woman」である。Henleyのリードボーカル、反復するギター、重いリズムによって、本作の中で最も緊張感のある音を作る。シングルは全米9位となり、アルバムから最大のヒットを記録した。

後年のHenleyが歌う物語性の強い曲へつながる一方、Leadonのギターとカントリー由来の感覚も残る。初期4人の共同作業がよく表れた曲である。

Peaceful Easy Feeling

Jack Tempchin作の「Peaceful Easy Feeling」は、Glenn Freyの落ち着いた歌と三声のコーラスを前に出した曲である。大きな展開を使わず、一定のテンポとギターの響きで題名どおり穏やかな感覚を保つ。シングルは全米22位を記録した。

コーラスは派手な効果ではなく、歌の空間を広げる役割を持つ。Eaglesのバラードやミドルテンポ曲の基本形が、デビュー作ですでに整っていたことが分かる。

Train Leaves Here This Morning

初期Eaglesのカントリー面を最も明確に示すのが「Train Leaves Here This Morning」である。Bernie LeadonがThe ByrdsのGene Clarkと共作し、Leadon自身がリードボーカルを担当した。別れと移動を扱う静かな曲で、アコースティック楽器がヒット3曲とは異なる余白を作る。

この曲ではLeadonのバンジョーとカントリーの語法が前へ出る。EaglesがFreyとHenleyだけを中心に始まったのではなく、Flying Burrito BrothersやDillard & Clarkにつながる経歴も初期の音を作っていたことが分かる。

Take the Devil / Tryin’

Randy Meisnerの作風を知るなら、自作して歌った「Take the Devil」と「Tryin’」を続けて聴きたい。前者は低く重い演奏、後者はアルバムを前向きに閉じるロック曲で、同じ歌い手の異なる表情が出ている。

Meisnerは後に「Take It to the Limit」で大きく注目されるが、デビュー作の時点から作曲とリードボーカルを担っていた。高音のコーラスだけではない役割を確認できる2曲である。

収録曲

  1. Take It Easy (Jackson Browne / Glenn Frey)
  2. Witchy Woman (Don Henley / Bernie Leadon)
  3. Chug All Night (Glenn Frey)
  4. Most of Us Are Sad (Glenn Frey)
  5. Nightingale (Jackson Browne)
  6. Train Leaves Here This Morning (Gene Clark / Bernie Leadon)
  7. Take the Devil (Randy Meisner)
  8. Earlybird (Bernie Leadon / Randy Meisner)
  9. Peaceful Easy Feeling (Jack Tempchin)
  10. Tryin' (Randy Meisner)

一般的な評価

Billboard 200で22位を記録し、米国でプラチナ認定を受けた。「Take It Easy」(全米12位)、「Witchy Woman」(全米9位)、「Peaceful Easy Feeling」(全米22位)の3曲がヒットし、デビュー作から複数の歌い手と曲調を認知させることに成功した。

後年の『Hotel California』ほどロックの重量感やアルバム全体の物語性は強くない。一方で、4人全員の声とカントリー色を最も素直に聴けるため、初期Eaglesを知る資料としては置き換えの利かない作品である。

『Desperado』との違い

本作は複数の作者と歌い手による10曲を並べ、バンドの幅を紹介するデビュー作である。次作『Desperado』は西部のアウトローを題材に曲を結び、FreyとHenleyの共同作曲を中心へ進めた。

最初に代表曲へ触れるなら『Eagles』、一枚を通した物語と曲順を味わうなら『Desperado』が分かりやすい。2作を続けると、4人の集合体からFreyとHenleyが方向をまとめるバンドへ変化したことが見えてくる。

どんな人におすすめか

  • Eaglesを「Hotel California」以外の時期から知りたい人
  • カントリーロックと多声コーラスが好きな人
  • Bernie LeadonとRandy Meisnerを含む初期4人の役割を聴き分けたい人

反対に、ギターを前面に出したロック色を求めるなら『On the Border』以降のほうが入りやすい。本作はハードな演奏より、声の組み合わせとアコースティック楽器を楽しむ人に向いている。

初めて聴くなら

まずヒット3曲を順に聴き、「Take It Easy」のFrey、「Witchy Woman」のHenley、「Peaceful Easy Feeling」のコーラスを確認する。次に「Train Leaves Here This Morning」と「Take the Devil」へ進むと、LeadonとMeisnerを含む4人組としての幅が分かる。

その後は全10曲を曲順どおりに聴き、次作『Desperado』へ進むのがおすすめである。よりロックへ向かう変化は『On the Border』で確認できる。

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参考資料

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