Eaglesの『The Long Run』は、1979年に発表された6作目のスタジオ・アルバム。『Hotel California』の巨大な成功を受けて制作され、Billboard 200で1位を獲得した。一方で制作は長期化し、完成後のツアーを経てバンドは活動停止へ向かう。
Randy Meisnerに代わってTimothy B. Schmitが加入し、「I Can’t Tell You Why」で新しい滑らかさを加えた。Joe Walshのロック、Don HenleyとGlenn Freyの乾いた視線、SchmitのR&B感覚が同居し、統一された一枚というより、第一期Eaglesの最後に残った多様な断面を聴く作品である。
まず押さえたい3点
- 『Hotel California』に続いて全米1位を獲得した、第一期最後のスタジオ作
- Timothy B. Schmitが初参加し、「I Can’t Tell You Why」で新しい声を加えた
- 「Heartache Tonight」の力強さと「The Sad Café」の終幕感が同じ盤に収まる
なぜ聴く価値があるのか
前作ほど一つの主題へ集中してはいないが、その散らばり方に1979年のEaglesがよく表れている。「The Long Run」はR&Bの軽い足取りを持ち、「Heartache Tonight」は荒いロックンロール、「Those Shoes」はトーキング・モジュレーターを使った暗いギター曲になる。
その間にTimothy B. Schmitの「I Can’t Tell You Why」やJoe Walshの「In the City」が入り、5人の役割が見えやすい。バンド内の緊張だけを物語にするのではなく、異なる書き手と歌い手が最後まで曲を持ち寄った作品として聴くと魅力が分かる。
Timothy B. Schmit加入で加わった滑らかさ
Randy Meisnerは「Take It to the Limit」の高音と、初期4人のハーモニーを支えた。後任のTimothy B. Schmitも高い声を持つが、歌い方と曲作りはより滑らかで、ソウルやR&Bに近い。
SchmitがDon Henley、Glenn Freyと共作した「I Can’t Tell You Why」では、エレクトリック・ピアノ、抑えたギター、柔らかなコーラスが中心になる。この曲があることで、本作はハードなロックだけに偏らず、80年代へ向かう洗練も備えた。
代表曲と聴きどころ
The Long Run
Don Henleyが歌うタイトル曲。軽快なリズムの内側で、長く続く関係やバンドそのものを思わせる問いを投げる。力で押す曲ではなく、皮肉を含んだ余裕のある演奏が特徴だ。
I Can’t Tell You Why
Timothy B. Schmitの加入を最も分かりやすく示す曲。高音のリード・ボーカルを中心に、楽器が互いの隙間を残して演奏する。EaglesのコーラスがR&B寄りのバラードにも自然に合うことを示した。
Heartache Tonight
Glenn Freyがリードを取る全米1位曲。手拍子、強いドラム、短いギター・フレーズを重ね、ライブで観客が一緒に歌えるロックンロールへ仕上げている。本作で最も即効性の高い一曲である。
Those Shoes
Don FelderとJoe Walshのギターが暗い反復を作り、都市の夜を冷たく描く。『Hotel California』の二本のリード・ギターを受け継ぎながら、より閉塞した音へ進めた曲である。
The Sad Café
アルバムの最後を飾るバラード。若い時代に集まった場所と、そこから失われたものを振り返る。第一期最後のアルバムという後の経緯を抜きにしても、作品を終幕へ導く役割が明確だ。
収録曲
- The Long Run
- I Can't Tell You Why
- In the City
- The Disco Strangler
- King of Hollywood
- Heartache Tonight
- Those Shoes
- Teenage Jail
- The Greeks Don't Want No Freaks
- The Sad Café
一般的な評価
Billboard 200で1位を獲得し、米国でマルチ・プラチナ認定を受けた。「Heartache Tonight」は全米1位、「The Long Run」「I Can’t Tell You Why」はともに全米8位を記録。「Heartache Tonight」はグラミー賞の最優秀ロック・ボーカル・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞した。
前作と比較されて評価が分かれやすいが、ヒット曲の幅と各メンバーの個性は明確である。『Hotel California』の再現ではなく、成功後のバンドが次の音を探した記録として見ると位置づけやすい。
『Hotel California』との違い
『Hotel California』は全9曲が成功と幻滅という大きな流れに結びつき、二本のリード・ギターを中心に高い統一感を持つ。『The Long Run』は曲調の振れ幅が大きく、メンバーそれぞれの持ち味が別々に現れる。
一枚の完成された世界を求めるなら前作、Timothy B. Schmit加入後の声や、第一期末期の多様さを聴くなら本作が向く。
どんな人におすすめか
- 「I Can’t Tell You Why」の滑らかなEaglesが好きな人
- Joe Walsh、Don Felder、Timothy B. Schmitそれぞれの持ち味を聴きたい人
- 『Hotel California』後のバンドがどこへ進んだか知りたい人
初めて聴くなら
「The Long Run」「I Can’t Tell You Why」「Heartache Tonight」の3曲で本作の幅を確認し、次に「Those Shoes」と「The Sad Café」を聴く。明るさ、滑らかさ、暗さ、終幕感というアルバムの主要な表情を短時間でつかめる。
70年代を順に追うなら『Hotel California』の次に本作へ進み、その後は再結成作『Hell Freezes Over』を聴くと、同じ楽曲が90年代にどう鳴り直したか分かる。
関連ページ
- アーティスト:Eagles
- アルバム:Hotel California
- アルバム:Hell Freezes Over
- アルバム:Long Road Out of Eden
- 特集:Eaglesの70年代アルバム案内
参考資料
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