On the Border cover

On the Border

発売
1974年3月22日
レーベル
Asylum Records
プロデュース
Glyn Johns / Bill Szymczyk
ジャンル
Rock / Country Rock

『On the Border』は、Eaglesがカントリーロックの調和を残しながら、エレクトリックギターを前面に出したサウンドへ踏み出した3作目だ。前2作の延長ではなく、制作体制そのものを変えて次の方向を探った作品として位置づけられる。

録音はロンドンのOlympic StudiosとロサンゼルスのRecord Plantで行われた。途中でプロデューサーがGlyn JohnsからBill Szymczykへ交代し、Don Felderも2曲の録音に参加。その成果を受けて正式メンバーとなった。アルバムは全米17位を記録し、最後のシングル「Best of My Love」はEagles初の全米1位に到達した。

まず押さえたい3点

  • Glyn Johnsが手がけたのは2曲で、残る8曲はBill Szymczykが制作した
  • Don Felderは「Already Gone」と「Good Day in Hell」に参加し、その後正式加入した
  • ギター中心の新方向と、従来のハーモニーが同じアルバムに共存している

なぜ聴く価値があるのか

このアルバムの面白さは、完成された一つの様式を聴くことより、Eaglesが自分たちの強みを組み替えていく過程を聴ける点にある。前半には「Already Gone」の明快なギター・ロックがあり、終盤には初期の繊細な歌唱を残す「Best of My Love」がある。両曲の距離そのものが、1974年時点のバンドの広さを示している。

後の『Hotel California』につながるギター編成はここで輪郭を現す。一方でBernie Leadonのカントリー色、Randy Meisnerの高音、Don HenleyとGlenn Freyを軸にしたコーラスもまだ中心にある。変化した部分と残した部分を比較しながら聴ける一枚だ。

プロデューサー交代で変わった音

録音は前2作と同じGlyn Johnsのもとで始まった。しかし、バンドはステージで演奏していたような、ドラムとエレクトリックギターの力をより直接的に録音したいと考えていた。ロンドンでのセッションを終えた後、制作の中心はBill Szymczykへ移った。

Johnsが完成させたのは「You Never Cry Like a Lover」と「Best of My Love」の2曲で、残りの8曲をSzymczykが担当している。そのため本作では、声の重なりを丁寧に見せる初期の音と、リズムやギターの輪郭を強めた新しい音を一枚の中で比較できる。

Don Felderが加えたギター

Don Felderは当初から全曲に参加したわけではない。「Already Gone」と「Good Day in Hell」の2曲でギターを弾き、その演奏をきっかけに正式メンバーへ迎えられた。

特に「Already Gone」では、歯切れのよいリズムギターと複数のリードが曲を前へ押す。ボーカルとコーラスだけでなく、ギター同士の応答を曲の見せ場にできる編成が整い始めたことが分かる。ここでの変化は、後年のDon FelderとJoe Walshによるツインギター体制への重要な一歩になった。

外部作家の曲をEaglesの音へ変える

本作にはメンバーの自作曲だけでなく、外部作家の曲も収められている。「Already Gone」はJack TempchinとRobb Strandlund、「Midnight Flyer」はPaul Craft、「Ol’ ‘55」はTom Waitsの作品だ。

選曲はばらばらに見えるが、Eaglesはコーラスと各メンバーの声質によって統一感を作っている。ブルーグラスの動きを持つ「Midnight Flyer」ではRandy Meisner、静かなロードソングである「Ol’ ‘55」ではGlenn FreyとDon Henleyの歌を軸にし、曲ごとに適した歌い手と編曲を選んでいる。

代表曲と聴きどころ

Already Gone

アルバムの新しい方向を最も分かりやすく示す曲。Glenn Freyの強い歌い出し、厚いコーラス、Don Felderを含むギターの重なりが一体になっている。カントリー由来の軽快さを残しながら、音の中心をエレクトリックギターへ移した。

Best of My Love

Don Henley、Glenn Frey、J.D. Southerの共作で、Glyn Johnsが制作した2曲の一つ。Henleyの抑えた歌唱とアコースティックな伴奏が、関係の終わりを振り返る歌詞を支える。アルバムの新路線とは異なる初期Eaglesらしい曲だが、1975年3月にバンド初の全米1位となった。

Good Day in Hell

Don Felderの参加効果を「Already Gone」より荒い手触りで聴ける曲。スライドギターと重いリズムが前に出ており、初期2作には少なかった緊張感がある。ここで加わった硬いギターが、次作以降の複数リード体制へつながる。

My Man

Bernie LeadonがGram Parsonsを追悼して書いた曲。カントリーの響きと簡潔なコーラスを使い、友人を失った感情を過度に劇的にせず伝えている。ロック路線への移行期にも、Leadonが担っていた音楽的な軸が残っていたことを示す。

Ol’ ‘55

Tom Waitsの曲を、Glenn Freyの主旋律とDon Henleyの歌唱でEagles流のハーモニーへ組み直したカバー。夜明けの道路を走る情景を、複数の声が広がる編曲で描いている。原曲との違いを聴き比べると、Eaglesのアレンジ能力がよく分かる。

収録曲

  1. Already Gone (Jack Tempchin / Robb Strandlund)
  2. You Never Cry Like a Lover (Don Henley / J.D. Souther)
  3. Midnight Flyer (Paul Craft)
  4. My Man (Bernie Leadon)
  5. On the Border (Don Henley / Bernie Leadon / Glenn Frey)
  6. James Dean (Don Henley / Glenn Frey / J.D. Souther / Jackson Browne)
  7. Ol' '55 (Tom Waits)
  8. Is It True? (Randy Meisner)
  9. Good Day in Hell (Don Henley / Glenn Frey)
  10. Best of My Love (Don Henley / Glenn Frey / J.D. Souther)

一般的な評価

『On the Border』はBillboard 200で17位に到達し、米国で200万枚相当の認定を受けた。「Already Gone」が全米32位を記録した後、「Best of My Love」が初の全米1位となり、アルバム発売後も長く聴かれるきっかけを作った。

作品単体では、次作『One of These Nights』や『Hotel California』ほど一つの方向に統一されていない。ただし、その不均一さは弱点だけではない。初期のカントリーロックと後のギター・ロックが交差する記録として、Eaglesの変化を理解するうえで欠かせない位置にある。

『Desperado』との違い

前作『Desperado』は、無法者という題材をアルバム全体に通し、曲順にも物語性を持たせていた。対して『On the Border』はコンセプトより曲ごとの個性を優先し、外部作家の曲も使いながら演奏の幅を広げている。

音の違いも明確だ。『Desperado』ではピアノ、アコースティックギター、コーラスが情景を作る場面が多い。本作ではドラムとエレクトリックギターが前へ出て、ライブでの勢いに近い曲が増えた。2作を続けて聴くと、バンドが何を変えようとしたのかが分かりやすい。

どんな人におすすめか

  • 「Hotel California」以前にEaglesのギターサウンドがどう作られたか知りたい人
  • 「Take It Easy」のカントリー色と「Already Gone」のロック感を両方楽しみたい人
  • Don Felder加入前後の編成と演奏の変化を聴き比べたい人
  • Tom WaitsやJ.D. Southerなど、周辺作家とのつながりに興味がある人

初めて聴くなら

最初は「Already Gone」「Best of My Love」「Good Day in Hell」の3曲を聴くと、本作の両端をつかみやすい。「Already Gone」で新しいギター路線、「Best of My Love」で初期のハーモニー、「Good Day in Hell」でDon Felderが持ち込んだ硬質な演奏を確認できる。

次にアルバムを通して聴き、「Midnight Flyer」「My Man」「Ol’ ‘55」に残るカントリーやフォークの要素を拾うとよい。統一感だけを求めるより、バンドが複数の方向を試した過程として聴くと、この作品の役割がはっきりする。

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参考資料

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