2007年に発表されたEaglesのスタジオ・アルバム。1979年の『The Long Run』以来、28年ぶりの新作として登場した。再結成後はライブ活動が中心だったが、本作では全20曲を収め、バンドとして新しい作品を作る意思を示した。
2枚組に近い長さを持つ作品で、カントリー、ポップ、ロック、社会的な視点を含む曲が並ぶ。70年代の濃密さをそのまま再現するというより、Eagles という名前が2000年代にどういう音楽として続きうるかを示したアルバムといえる。
まず押さえたい3点
- 『The Long Run』以来28年ぶり、再結成後では唯一のスタジオ・アルバム
- Glenn Frey、Don Henley、Joe Walsh、Timothy B. Schmitの4人が曲と歌を分担
- 初期から演奏していたJ.D. Souther作「How Long」と、長編タイトル曲が過去と現在をつなぐ
なぜ聴く価値があるのか
70年代の代表作と同じ緊張感を求めると長く感じるが、4人が長い活動歴の後で何を歌うかに注目すると見え方が変わる。関係のすれ違い、失われる風景、戦争や消費への視線、老いと別れが、穏やかな曲と重いロックの両方で扱われている。
20曲という長さも本作の性格である。一つの物語へ絞るのではなく、各メンバーの持ち味を持ち寄った。Glenn Freyの端正なポップ、Don Henleyの社会的な歌、Joe Walshのギター、Timothy B. Schmitの柔らかな高音を順に聴ける。
70年代とのつながり
「How Long」はJ.D. Southerが1972年に発表した曲で、Eaglesも結成初期から演奏していた。28年ぶりの新作でこの曲を取り上げたことで、再結成後のアルバムはデビュー期の人脈と音へつながった。
一方、タイトル曲「Long Road Out of Eden」は約10分に及ぶ重い作品で、単なる原点回帰ではない。初期の旅や自由のイメージを、豊かさの代償や終わりの見えない争いへ反転させる。過去の音を再現する曲と、現在を批評する曲が同じ盤にある。
代表曲と聴きどころ
How Long
Glenn FreyとDon Henleyがリードを分け合い、ギターとコーラスを軽快に重ねる。初期Eaglesのカントリーロックを、再結成後の安定した演奏で鳴らした曲。グラミー賞の最優秀カントリー・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞した。
Busy Being Fabulous
Don Henleyが歌う、忙しさによって関係を失っていく人物の歌。明るく聞きやすい演奏と、距離の広がる歌詞の対比がEaglesらしい。
Waiting in the Weeds
Henleyの抑えた歌からコーラスが広がる長めのバラード。派手な展開より、季節と時間の比喩を積み重ねる。再結成後のEaglesが持つ成熟した面を聴くなら外せない。
No More Cloudy Days
Glenn Frey作の明快なポップソング。重い題材の多いアルバムの中で、短い構成と親しみやすいメロディが息抜きになる。
Long Road Out of Eden
Don Henley、Glenn Frey、Timothy B. Schmitの共作による長編曲。静かな導入からギターを含む大きな展開へ進み、アルバムの社会的な視点を集約する。全20曲の中心に置かれた、本作の主題を最も強く示す曲である。
It’s Your World Now
アルバムを閉じるGlenn Freyの曲。マリアッチ風の管楽器を使い、次の世代へ言葉を渡すように終わる。結果的にFreyが参加した最後のEaglesスタジオ・アルバムの結びとしても重く響く。
収録曲
- No More Walks in the Wood
- How Long
- Busy Being Fabulous
- What Do I Do with My Heart
- Guilty of the Crime
- I Don't Want to Hear Any More
- Waiting in the Weeds
- No More Cloudy Days
- Fast Company
- Do Something
- You Are Not Alone
- Long Road Out of Eden
- I Dreamed There Was No War
- Somebody
- Frail Grasp on the Big Picture
- Last Good Time in Town
- I Love to Watch a Woman Dance
- Business as Usual
- Center of the Universe
- It's Your World Now
28年ぶりの新作としての位置づけ
「How Long」は J.D. Souther が書いた曲で、Eagles が初期から演奏していた素材でもある。その意味で本作は、完全な新章というより、過去の人脈と記憶を再結成後のバンドに戻す性格も持っている。
一方で、アルバム全体は70年代の代表作ほど鋭く一点に絞られてはいない。だからこそ、このサイトでは『Hotel California』や『The Long Run』と同じ重さではなく、再結成後の大きな補足として置く。Eagles が懐古だけで終わらず、新作としてもう一度バンド名を更新しようとした記録である。
『Hell Freezes Over』との違い
『Hell Freezes Over』は再結成そのものを記録した作品で、新曲は4曲、中心は70年代曲のライブ演奏だった。本作は20曲すべてを新しいスタジオ・アルバムとして並べ、再結成を一時的な出来事ではなく継続するバンドへ変えた。
代表曲を別の編曲で聴きたいなら『Hell Freezes Over』、2000年代のEaglesが新しく書いた曲を知りたいなら本作が向く。
どんな人におすすめか
- 70年代だけでなく、再結成後のEaglesまで追いたい人
- 「How Long」の初期的な響きと、タイトル曲の重い視点を比べたい人
- Glenn Freyが参加した最後のスタジオ作を作品単位で聴きたい人
初めて聴くなら
最初は「How Long」「Busy Being Fabulous」「Waiting in the Weeds」で聞きやすい側をつかみ、次に「Long Road Out of Eden」へ進む。最後に「It’s Your World Now」を聴けば、本作の原点回帰、現在への視線、別れという三つの軸が見える。
20曲を一度に聴く必要はない。前半と後半に分け、各メンバーのリード曲を拾いながら聴く方が作品の幅を理解しやすい。
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参考資料
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