Eaglesの『Desperado』は、1973年4月17日に発表された2作目のスタジオ・アルバム。一言でいえば、西部のアウトローの物語を借りて、自由、孤独、成功と破滅を一枚の流れで描いた作品である。
実在したDoolin-Dalton一味を中心的な題材にしながら、史実をそのまま再現したアルバムではない。アウトローの生き方を、成功を目指す若いロック・バンドの姿へ重ねている。前作『Eagles』に続いてGlyn Johnsがプロデュースし、ロンドンのIsland Studiosで録音された。
まず押さえたい3点
- 作品の特徴: 西部開拓時代のアウトローをモチーフに、11曲を自由、孤独、成功と破滅という主題で結んだコンセプト作。
- まず聴く3曲: 物語を始める「Doolin-Dalton」、夜明けの余韻を描く「Tequila Sunrise」、孤独な主人公へ語りかける「Desperado」。
- おすすめする人: ヒット曲の寄せ集めではなく、歌詞、曲順、繰り返される旋律を一枚で味わいたい人。
なぜ聴く価値があるのか
本作を聴く価値は、Eaglesがデビュー翌年の段階で、アルバム全体を一つの主題でまとめようとした点にある。「Doolin-Dalton」で始まった物語は、若さ、酒、名声、孤独を通り、最後に「Desperado」の旋律と重なって終わる。
個々の曲は西部の人物を扱っていても、語られる感情は1970年代の若者やロック・ミュージシャンにも通じる。自由を求めて集団へ加わり、名を上げるほど逃げ場を失う。その構図を、結成2年目だったEagles自身の野心と重ねて聴ける。
「Take It Easy」のような明快な入口は少ないが、曲同士のつながりはデビュー作より強い。冒頭の「Doolin-Dalton」が途中と終盤でも形を変えて戻り、11曲を一つの物語として閉じる。
アウトローとロック・バンドを重ねた物語
企画の出発点は、Glenn Freyが反英雄を題材にしたコンセプト作を考えたことだった。Jackson Browneが西部のガンマンに関する本を示し、「Doolin-Dalton」などを書き始める中で、構想はDoolin-Dalton一味と西部劇の世界へ絞られていった。
ただし、全曲が同じ登場人物を追う厳密な物語ではない。「Twenty-One」「Certain Kind of Fool」「Outlaw Man」は、それぞれ異なる若者やアウトローの心情を描く。共通するのは、自由への憧れと、その選択がもたらす孤独である。
Rock and Roll Hall of Fameの解説では、本作のアウトロー像は当時の世代とロック・スターの盛衰を映す寓話として説明されている。馬や銃の時代を描きながら、実際には若いバンド自身の野心と危うさを語っていると考えると、現在でも作品の主題をつかみやすい。
Glyn Johnsがまとめた曲順と音
Glyn Johnsは前作に続き、カントリー楽器、コーラス、簡潔なバンド演奏を明瞭に録音した。Bernie Leadonのバンジョーやマンドリン、Glenn Freyのギターと鍵盤、Don Henleyのドラムが、西部劇のイメージを大げさに演出せず支えている。
本作では同じ旋律を繰り返して曲同士を結ぶ。「Doolin-Dalton」は冒頭、短いインストゥルメンタル、終曲の三度現れ、最後は「Desperado」と結びつく。最初に示した物語を、別の角度から振り返って閉じる設計になっている。
録音の整った響きと、物語の荒々しさには対照がある。演奏を無理に西部劇風へ寄せず、声とアコースティック楽器を中心にしたため、コンセプトを知らなくてもカントリーロックとして聴ける。
グレン・フライとドン・ヘンリーの共作が始まる
デビュー作では4人全員と外部作家の曲が並んでいた。本作ではGlenn Frey(グレン・フライ)とDon Henley(ドン・ヘンリー)の共作が「Tequila Sunrise」「Desperado」を生み、後のEaglesを方向づける作曲チームがはっきり形になる。
特に「Desperado」は、Henleyが持っていた曲の断片をFreyが構成し、二人で完成させた初期の共作である。Henley自身も、この曲をきっかけに二人が作曲チームになったと振り返っている。
一方で、Bernie Leadonの「Twenty-One」「Bitter Creek」、Randy Meisnerが加わった「Certain Kind of Fool」も物語に欠かせない。FreyとHenleyが中心へ進みながら、初期4人の作風をまだ一枚の中で聴ける過渡期でもある。
代表曲と聴きどころ
Doolin-Dalton
物語の入口になるのが「Doolin-Dalton」である。Glenn Frey、Don Henley、J.D. Souther、Jackson Browneの共作で、列車強盗と逃亡を重ねたDoolin-Dalton一味の盛衰を歌う。Henleyのリードボーカルとハーモニカが、乾いた緊張感を作る。
曲は後半でインストゥルメンタルとして戻り、最後には「Desperado」と結びつく。単独曲であると同時に、アルバム全体をつなぐ主題曲として機能している。
Tequila Sunrise
西部劇の大きな物語から、夜明けに一人残された人物へ視点を近づける曲が「Tequila Sunrise」である。FreyとHenleyの共作で、Freyがリードボーカルを担当。テキーラを使ったカクテル名と、酒を飲みながら迎える朝の情景を重ねている。
短い曲の中で、恋愛、仕事、諦めが入り混じる。派手な展開はないが、アコースティック・ギターとコーラスによって、アウトローの孤独を日常的な感情へ置き換えている。
Desperado
アルバムの中心に置かれた「Desperado」は、孤独を選び続ける人物へ、心を開くよう語りかける曲である。HenleyのリードボーカルとFreyのピアノを軸に、弦楽器が徐々に加わる。西部の無法者だけでなく、人との関係を避ける人物一般に届く書き方が、曲をアルバムの外へ広げた。
当時シングルには選ばれなかったが、後にLinda RonstadtやCarpentersなどが取り上げ、Eaglesの代表曲として定着した。GRAMMY Hall of Fameにも選ばれている。
Outlaw Man
アルバム中で外部作家の曲を物語へ組み込んだのが、David Blue作の「Outlaw Man」である。Glenn Freyが歌い、ほかの曲より強いロックの推進力を持つ。自分の生き方から逃れられない人物像が、本作の主題と自然につながっている。
静かなカントリー曲が多い中で演奏に速度を加え、後半を動かす役割も担う。次作『On the Border』で強まるロック志向の予告としても聴ける。
Bitter Creek / Doolin-Dalton / Desperado (Reprise)
Bernie Leadon作の「Bitter Creek」は、逃亡の果てに残る孤立を、約5分かけて静かに描く。Leadonの歌とアコースティック楽器が、物語の終わりへ向かう空気を作る。
終曲では「Doolin-Dalton」と「Desperado」の旋律が一つになり、個々の人物の選択をアルバム全体の結末へまとめる。最初の曲へ戻るのではなく、二つの主題を重ねて終えることで、自由への憧れと孤独が同じ物語だったことを示している。
収録曲
- Doolin-Dalton (Glenn Frey / Don Henley / J.D. Souther / Jackson Browne)
- Twenty-One (Bernie Leadon)
- Out of Control (Don Henley / Glenn Frey / Tom Nixon)
- Tequila Sunrise (Don Henley / Glenn Frey)
- Desperado (Don Henley / Glenn Frey)
- Certain Kind of Fool (Don Henley / Glenn Frey / Randy Meisner)
- Doolin-Dalton (Instrumental)
- Outlaw Man (David Blue)
- Saturday Night (Don Henley / Glenn Frey / Bernie Leadon / Randy Meisner)
- Bitter Creek (Bernie Leadon)
- Doolin-Dalton / Desperado (Reprise)
一般的な評価
Billboard 200では41位にとどまり、発売時のチャート成績はデビュー作を下回った。一方で販売は時間をかけて伸び、米国で2×プラチナ認定を受けている。発売直後の順位と、その後の評価が一致しない作品である。
「Desperado」はシングルではなかったが、カバーやライブ演奏を通じて代表曲として定着した。アルバム自体もGRAMMY Hall of Fameに選ばれ、FreyとHenleyの共作、コンセプト、曲順が後のEaglesにつながる作品として位置づけられている。
デビュー作『Eagles』との違い
デビュー作『Eagles』は4人全員の声と作風を紹介し、3曲のヒットを生んだ。本作は個々の違いを残しながら、西部のアウトローという共通主題に曲を集め、アルバム全体の流れを優先している。
代表曲をすぐに聴くならデビュー作のほうが入りやすい。曲順、歌詞、繰り返される旋律まで含めて一枚を味わうなら『Desperado』が向いている。二作を続けると、FreyとHenleyが作曲と構成の中心へ進んだ変化も分かる。
どんな人におすすめか
- Eaglesの歌詞とアルバム構成を深く味わいたい人
- カントリーロックと西部劇のイメージが結びつく作品が好きな人
- FreyとHenleyの共作チームが始まった時期を聴きたい人
反対に、ギターを前面に出したロック・サウンドを求めるなら、次作『On the Border』以降のほうが分かりやすい。本作は単曲を選ぶより、物語の流れを追える時間に聴くのが向いている。
初めて聴くなら
まず「Doolin-Dalton」「Tequila Sunrise」「Desperado」の3曲で、物語、日常の孤独、中心主題の違いをつかむ。次に「Outlaw Man」と「Bitter Creek」を聴き、最後は冒頭からリプライズまで曲順どおりに通すと構成が見えやすい。
前の一枚へ戻るなら『Eagles』、ロック色が強まる次の段階は『On the Border』がおすすめである。初期作品を広く聴くなら『Their Greatest Hits (1971-1975)』も入口になる。
関連ページ
- アーティスト:Eagles
- 特集:Eaglesの70年代アルバム案内
- アルバム:Eagles
- アルバム:On the Border
- アルバム:Their Greatest Hits (1971-1975)
- 特集:ウエストコーストサウンド名盤10選
参考資料
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