America

アメリカ
結成
1970年
出身
ロンドン RAF South Ruislip(全員米国空軍関係者の子息)
Homecoming のジャケット 『Homecoming』(1972)

アメリカ(America)は、「A Horse with No Name」「Ventura Highway」「Sister Golden Hair」で知られる70年代のソフトロック・バンド。国名と同じ名前だが、ここで扱う America は Gerry Beckley、Dewey Bunnell、Dan Peek の3人で始まった音楽グループである。

アルバムから知りたい場合は、Americaの70年代アルバム案内で、最初に聴きたい4枚と全8作の流れをまとめている。

Americaはどんなバンドか

ウエストコーストロックの文脈では、アコースティックなギター、柔らかいコーラス、乾いた風景感を分かりやすく示す存在である。Eagles よりカントリー色が淡く、親しみやすいメロディと三人の声の重なりに特徴がある。

1970年、ロンドン郊外の RAF South Ruislip 基地周辺で、米国空軍関係者を父に持つ Gerry Beckley、Dewey Bunnell、Dan Peek の3人によって結成された。全員アメリカ国籍だが、出会いと結成はイギリスで行われている。

1971年末にデビューアルバム『America』を英国で発表、翌1972年にはシングル「A Horse with No Name」が全米1位、アルバムも全米1位を記録した。その後米国に拠点を移し、ロサンゼルスを中心に活動。1973年には第15回グラミー賞最優秀新人賞を受賞している。

1974年からはビートルズのプロデューサーとして知られる George Martin がアルバム制作を担当し、『Holiday』(1974)、『Hearts』(1975)、『Hideaway』(1976)、『Harbor』(1977) と作品を重ねた。「Tin Man」「Lonely People」「Sister Golden Hair」「Daisy Jane」などのヒットを生んでいる。

1977年に Dan Peek が脱退(後にクリスチャン・ロック・アーティストとして活動、2011年死去)、以降は Beckley と Bunnell の2人組として現在まで活動を続けている。

1982年には Russ Ballard 作の「You Can Do Magic」が全米8位となり、二人組時代にも大きなヒットを残した。Gerry Beckley は2024年にツアーから引退したが、America のメンバーとしては活動を継続。2026年のツアーは Dewey Bunnell を中心に行われている。

バンド名「America」の由来と英国結成の理由

America はアメリカのバンドとして知られるが、結成地はロンドンである。三人は米国空軍関係者の家庭で育ち、英国にある London Central High School で知り合った。英国のグループだと思われず、自分たちの背景が伝わる名前として「America」を選んだ。

検索では国名の「アメリカ」や、同名のデビューアルバム『America』と混ざりやすい。当サイトでは、バンドを指す場合は「アメリカ(America)」、1971年の作品を指す場合は『America』と表記している。

3人のメンバーと曲作りの違い

初期Americaは、一人のリーダーがすべてを書くバンドではない。三人がそれぞれ作曲し、リードボーカルを分け合ったことで、アルバムの中に異なる色が生まれた。

  • Gerry Beckley ── 「I Need You」「Daisy Jane」「Sister Golden Hair」を書いた。端正なメロディと切なさを含むポップソングが持ち味。
  • Dewey Bunnell ── 「A Horse with No Name」「Ventura Highway」「Tin Man」を書いた。乾いた風景、旅、幻想的な言葉をアコースティックな反復に乗せる。
  • Dan Peek ── 「Don’t Cross the River」「Lonely People」「Woman Tonight」などを担当。カントリーやロック、ソウルに近い力強さを加えた。

三人の声はよく溶け合うが、作曲者ごとの違いを意識するとAmericaのアルバムはさらに分かりやすい。Beckleyのポップ感覚、Bunnellの風景感、Peekの推進力が、初期の三本柱である。

最初に聴きたい代表曲

  • A Horse with No Name ── Dewey Bunnellが書いた、Americaの名前を世界へ広めた全米1位曲。Neil Youngの歌声や作風と比較されることが多いが、Neil Youngの曲ではない。
  • I Need You ── Gerry Beckleyのメロディ感覚が分かる初期のバラード。全米9位を記録した。
  • Ventura Highway ── 二本のアコースティック・ギターと開放的なコーラスが印象的な全米8位曲。西海岸の風景を感じたい人の入口になる。
  • Tin Man ── 『オズの魔法使』を題材にしたDewey Bunnell作の全米4位曲。George Martinプロデュース期の洗練を示す。
  • Lonely People ── Dan Peekと妻Catherine Peekの共作。孤独な人を励ます内容を、軽やかなハーモニーで聴かせる全米5位曲。
  • Sister Golden Hair ── Gerry Beckley作の2曲目の全米1位。明るいギターと、決断しきれない心情の対照がAmericaらしい。
  • You Can Do Magic ── Dan Peek脱退後の1982年に全米8位を記録した復活ヒット。70年代初期とは異なる、整った80年代ポップの響きを持つ。

「A Horse with No Name」はNeil Youngの曲?

「A Horse with No Name」はNeil Youngの曲ではなく、Dewey Bunnellが書いて歌ったAmericaの曲である。乾いた声、簡潔なコード進行、荒野を思わせる雰囲気からNeil Youngと混同されることがあるが、1971年にAmericaのシングルとして発表され、米国盤のデビューアルバムにも追加された。

この一曲だけで判断すると素朴なフォークロック・グループに聞こえるが、「Sister Golden Hair」まで進むとGerry Beckleyのポップな作風、「Lonely People」ではDan Peekの色も見えてくる。

George Martinと作った黄金期

3作目『Hat Trick』のあと、Americaは1974年の『Holiday』からThe Beatles作品で知られるGeorge Martinをプロデューサーに迎えた。エンジニアのGeoff Emerickも参加し、初期のアコースティックな響きに、ストリングスや鍵盤を生かした精密なスタジオワークが加わった。

この体制から「Tin Man」「Lonely People」を収録した『Holiday』、さらに「Sister Golden Hair」「Daisy Jane」を収録した『Hearts』が生まれた。素朴な初期と洗練された中期の両方があることが、Americaを長く聴けるバンドにしている。

初めて聴くアルバムはどれ?

  • バンドの原点を知るなら ── 『America』。全米1位「A Horse with No Name」と「I Need You」を収録。
  • 西海岸らしい爽快感なら ── 『Homecoming』。「Ventura Highway」を含み、アコースティックな魅力が最もまとまっている。
  • George Martin期の完成度なら ── 『Holiday』。「Tin Man」「Lonely People」の二大ヒットを収録。
  • ポップな代表作なら ── 『Hearts』。「Sister Golden Hair」から入りたい人に向く。

アルバム単位で聴くなら、アメリカ(America)の70年代アルバム案内で、名盤4選を入口に『Hat Trick』、『Hideaway』『Harbor』、『Silent Letter』を含む全8作の流れを整理している。

Americaとウエストコーストロック

Americaの三人は英国で結成し、最初の録音も英国で行ったため、厳密にはロサンゼルスで誕生したバンドではない。それでも、米国移住後の『Homecoming』以降に作られた乾いたギター、柔らかなコーラス、道路と風景を思わせる歌は、70年代ウエストコーストロックを象徴する音の一つになった。

Eaglesより軽やかで、Crosby, Stills & Nashほど声の構築を前面に出さず、親しみやすいメロディを中心に置く。西海岸ロックを初めて聴く人にも薦めやすい理由は、この入りやすさにある。

参考資料

メンバー

変遷

  1. 1970 ロンドン郊外の RAF South Ruislip 基地周辺で結成。Gerry Beckley、Dewey Bunnell、Dan Peek の3人組
  2. 1971 デビューアルバム『America』をワーナーから発表(英)
  3. 1972 「A Horse with No Name」全米1位、米国へ拠点を移す
  4. 1973 第15回グラミー賞 最優秀新人賞を受賞
  5. 1974 『Holiday』を George Martin プロデュースで発表
  6. 1975 『Hearts』発表、「Sister Golden Hair」全米1位
  7. 1977 Dan Peek が脱退、以降 Beckley / Bunnell のデュオで活動を継続
  8. 1982 Russ Ballard 作の「You Can Do Magic」が全米8位を記録
  9. 2011 Dan Peek が死去
  10. 2024 Gerry Beckley がツアー活動から引退。メンバーとしての活動は継続

Discography

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