アメリカ(America)のアルバム案内|70年代名盤4選と全8作

「アメリカ」という名前で検索すると国名と混ざるが、ここで扱うのは America というソフトロック・バンドである。 「A Horse with No Name」「Ventura Highway」「Sister Golden Hair」で知られる3人組で、 70年代に8枚のスタジオ・アルバムを発表した。本記事では、最初に聴きたい4枚と全作品の流れを整理する。

最初の一枚なら『Homecoming』

Americaを初めてアルバムで聴くなら、1972年の 『Homecoming』を薦めたい。 「Ventura Highway」を含み、二本のアコースティック・ギター、三声のハーモニー、旅と風景を思わせる歌が全10曲を通して聞こえる。

最大のヒットから入るならデビュー作『America』、 George Martinのピアノとストリングスを聴くなら『Holiday』、 明快なポップソングを重視するなら『Hearts』が向く。 一枚だけを絶対的な最高傑作とするより、好みの入口を選べることがAmericaの面白さである。

Americaはどんなバンドか

Americaは、Gerry Beckley、Dewey Bunnell、Dan Peekによるトリオとして1970年に結成された。 全員アメリカ国籍だが、出会いと結成はイギリスの米軍基地周辺という少し変わった経歴を持つ。 音はアコースティック・ギターとコーラスを中心にしたフォークロック/ソフトロックで、 Eaglesほどカントリー色が強くなく、Jackson Browneほど内省に沈みきらない。

だからAmericaは、西海岸ロックの中でも親しみやすい。 メロディは明快で、演奏は軽い。けれど、歌の奥には旅、孤独、風景、少し現実離れした言葉がある。 そのバランスが、70年代らしい空気を作っている。

最初に聴きたい名盤4選

  1. America のアルバムジャケット
    America 1971 / 代表曲: A Horse with No Name / I Need You

    乾いたアコースティック・ギターと少し幻想的な歌詞が、バンドの原型を作ったデビュー作。初期盤には「A Horse with No Name」が入っておらず、シングルの成功後に追加された。

    こんな人に: 原点と英国録音の空気を知りたい人

  2. Homecoming のアルバムジャケット
    Homecoming 1972 / 代表曲: Ventura Highway

    米国へ拠点を移した三人が、ギターとハーモニーを明るく引き締めた2作目。「Ventura Highway」の開放感が、Americaの西海岸的なイメージを決定づけた。

    こんな人に: 西海岸らしい爽快感を味わいたい人

  3. Holiday のアルバムジャケット
    Holiday 1974 / 代表曲: Tin Man / Lonely People

    George Martinを初めて迎えた転換作。アコースティック・ギターと三声コーラスへ、ピアノとストリングスを加えた。

    こんな人に: 三人の曲とGeorge Martinの編曲を一緒に聴きたい人

  4. Hearts のアルバムジャケット
    Hearts 1975 / 代表曲: Sister Golden Hair / Daisy Jane

    George Martinとの共同制作がさらに自然になった5作目。「Sister Golden Hair」の明るさと切なさを中心に、三人の作風を最も親しみやすくまとめている。

    こんな人に: 親しみやすいヒット曲から入りたい人

70年代スタジオ・アルバム全8作

ベスト盤『History: America's Greatest Hits』を除くと、Americaは70年代に8枚のスタジオ・アルバムを発表した。 1971年から1977年まではBeckley、Bunnell、Peekの三人組、1979年の『Silent Letter』はBeckleyとBunnellの二人組による作品である。

  1. 1971 America

    代表曲: A Horse with No Name / I Need You

    英国で録音したデビュー作。アルバムと「A Horse with No Name」がともに全米1位となった。

  2. 1972 Homecoming

    代表曲: Ventura Highway / Don't Cross the River

    米国移住後の開放感と、三人のソングライターとしての違いが明確になった初期の代表作。

  3. 1973 Hat Trick

    代表曲: Muskrat Love / Hat Trick

    三人が共同で書いた長いタイトル曲など、アルバム志向の実験を進めた作品。大きなヒットには恵まれず、次作で制作体制が変わる。

  4. 1974 Holiday

    代表曲: Tin Man / Lonely People

    George MartinとGeoff Emerickを迎え、初期のフォークロックを精密なポップへ発展させた復調作。

  5. 1975 Hearts

    代表曲: Sister Golden Hair / Daisy Jane

    全米1位「Sister Golden Hair」を収録。ヒット曲とアルバム全体のまとまりを両立した黄金期の一枚。

  6. 1976 Hideaway

    代表曲: Today's the Day / Amber Cascades

    George Martin期の滑らかなスタジオ・サウンドを継承。穏やかな曲の中に、70年代半ばらしい厚みを加えている。

  7. 1977 Harbor

    代表曲: God of the Sun / Now She's Gone

    ハワイで制作された三人組最後のスタジオ作。同年にDan Peekが脱退し、最初の時代が終わる。

  8. 1979 Silent Letter

    代表曲: Only Game in Town / All My Life

    Gerry BeckleyとDewey Bunnellの二人組となってから最初の作品で、George Martinとの最後のスタジオ・アルバム。

アルバムの流れを3期で見る

初期: ギターと三声のハーモニー

『America』『Homecoming』には、初期のAmericaらしさがよく出ている。 「A Horse with No Name」ではバンドの輪郭が見え、「Ventura Highway」では西海岸的な明るさが前に出る。 この2枚には、アコースティック・ギターとコーラスを軸にした基本形がある。

3作目『Hat Trick』では、三人の共作による長いタイトル曲や「Muskrat Love」を収録し、ヒット曲の形式から離れた試みも行った。 商業的には前2作ほど伸びなかったが、Americaが単純なソフトロックだけではないことを示す作品である。

中期: George Martinと作った黄金期

George Martinがプロデュースした 『Holiday』『Hearts』では、アコースティック・ギターと三声コーラスへ、ピアノ、ストリングス、細かなスタジオ処理が加わる。 前者は「Tin Man」「Lonely People」、後者は「Sister Golden Hair」「Daisy Jane」を生み、バンドの黄金期を作った。

『Hideaway』『Harbor』も同じ制作体制を引き継ぐが、音は次第に厚く滑らかになる。 『Harbor』を最後にDan Peekが脱退したため、Beckley、Bunnell、Peekが曲とリード・ボーカルを分け合う体制はここで終わる。

二人組の出発: 『Silent Letter』

1979年の『Silent Letter』は、Gerry BeckleyとDewey Bunnellによる最初のスタジオ作。 George Martinとの最後のアルバムでもあり、70年代の精密なポップ・サウンドと、80年代へ向かう二人組Americaの間に位置する。 後の復活ヒット「You Can Do Magic」は1982年の『View from the Ground』に収録される。

曲の作者でアルバムを選ぶ

初期Americaは三人全員が曲を書き、リード・ボーカルを分け合った。作者の違いを知ると、アルバムごとの聴きどころが見つけやすい。

ベスト盤から入ってもよい?

代表曲を短時間で知るなら、1975年の『History: America's Greatest Hits』もよい入口になる。 George Martinが初期曲をリミックスし、「A Horse with No Name」から「Sister Golden Hair」までをまとめたベスト盤である。

ただし、アルバム曲や三人の作風の違いは見えにくい。「Ventura Highway」が気に入ったら『Homecoming』、 「Tin Man」なら『Holiday』、「Sister Golden Hair」なら『Hearts』へ進むと、同じ作者のアルバム曲まで続けて聴ける。

ウエストコーストロックとして聴くポイント

Americaで前へ出るのは、派手なギターソロや重いロック感ではない。 乾いたアコースティック・ギター、重なりすぎないコーラス、風景が流れていくような曲調にある。 EaglesやLinda Ronstadtを聴いたあとにAmericaへ行くと、同じ70年代でも少し軽く、透明度の高い側面が見える。

Americaから ウエストコーストロック名盤案内を見ると、 Eagles、Jackson Browne、Linda Ronstadt、Neil Young、Little Featとの距離感も見えてくる。

参考資料

関連ページ

詳しい作品データや配信リンクは、各アルバムページに分けて掲載しています。