Holiday cover

Holiday

発売
1974年6月26日
レーベル
Warner Bros. Records
プロデュース
George Martin
ジャンル
Soft Rock

Americaの『Holiday』は、1974年6月26日に発表された4作目のスタジオ・アルバム。The Beatlesのプロデューサーとして知られるGeorge Martinを初めて迎え、ロンドンのAIR Studiosで制作された。

全米4位の「Tin Man」と全米5位の「Lonely People」を収録し、アルバムもBillboard 200で3位を記録。アコースティック・ギターと三声のハーモニーというAmericaの核を残しながら、ピアノ、ストリングス、緻密なスタジオ処理によって音の色彩を広げた。初期の素朴さから中期の洗練へ移る転換点である。

なぜ『Holiday』は名盤なのか

最大の理由は、George MartinがAmericaの個性を作り替えず、三人の長所を見えやすくしたことにある。Dewey Bunnellの幻想的な言葉、Gerry Beckleyの端正なメロディ、Dan Peekの率直で力強い曲を、それぞれ異なるアレンジで包んでいる。

短いオーケストラ曲「Miniature」から「Tin Man」へ流れ込む冒頭は、その変化を象徴する。フォークロックの軽さを損なわず、アルバムとして聴かせる導入を作った。全12曲は派手なコンセプトで統一されてはいないが、曲間の温度と楽器の配置が整い、一枚を通して滑らかに聴ける。

前作『Hat Trick』ではヒットが続かなかったが、『Holiday』は2曲のトップ5ヒットを生み、バンドを再び商業的な軌道へ戻した。単なる復調ではなく、翌年の『Hearts』へ続くAmericaの黄金期を始めた作品でもある。

George MartinとGeoff Emerickが加えたもの

プロデュースとアレンジをGeorge Martin、エンジニアリングをGeoff Emerickが担当した。二人はThe Beatlesの録音で知られる組み合わせだが、『Holiday』ではビートルズ風の仕掛けを過剰に持ち込まず、Americaの声とギターを中心に置いている。

Martinは「Tin Man」でピアノも演奏。曲の輪郭を明るくしながら、三人のハーモニーが自然に前へ出る配置を作った。ストリングスや鍵盤は装飾ではなく、曲ごとの感情を補う役割を担っている。

また、本作はWillie LeacoxがAmericaの録音に初参加したアルバムである。彼の抑制されたドラムは、その後長くバンドのサウンドを支えることになる。

代表曲と聴きどころ

Tin Man

Dewey Bunnell作。『オズの魔法使』のブリキ男を手がかりにしながら、断片的なイメージを重ねるBunnellらしい曲である。メジャーセブンスを生かしたアコースティック・ギター、George Martinのピアノ、滑らかなコーラスが溶け合い、Americaのソフトロックを代表する一曲になった。

全米4位に加えてAdult Contemporaryチャートでは1位を記録した。歌詞を物語として解くより、言葉の響きとコードの流れを一緒に味わうと魅力が伝わりやすい。

Lonely People

Dan Peekと妻Catherine Peekの共作。孤独を感じる人へ諦めず進むよう呼びかける、簡潔で前向きな歌だ。Peekのまっすぐなボーカルと三人のコーラス、曲後半のハーモニカが、説教調にならない温かさを作る。全米5位を記録した。

Another Try

Gerry Beckley作の静かなバラード。家族の痛みを描く重い題材を、ピアノと控えめなオーケストレーションで包んでいる。「Tin Man」「Lonely People」の陰に隠れやすいが、MartinがAmericaの繊細な曲をどう整えたかがよく分かる。

Old Man Took

Dewey Bunnell作。流れるようなアコースティック・ギターとコーラスを軸にしつつ、曲が進むにつれて楽器の層が増していく。初期Americaの風景感と、George Martin期の構築力が自然につながった一曲である。

In the Country

Dan Peek作のアルバム最終曲。都会を離れて自然の中へ向かう感覚を、力強いリズムとギターで聴かせる。穏やかな曲が多い本作を、開放感のある演奏で締めくくる。

『Homecoming』との違い

『Homecoming』は、二本のアコースティック・ギターと三人の声をそのまま生かした、明るく開放的な作品だった。『Holiday』ではその基本形にピアノ、ストリングス、オーケストラの導入を加え、各曲をより明確なポップソングとして仕上げている。

「Ventura Highway」の自然な疾走感を好むなら『Homecoming』、「Tin Man」の緻密な響きや「Another Try」の陰影に惹かれるなら『Holiday』が向く。二枚を続けて聴くと、セルフプロデュース期からGeorge Martin期への変化が最も分かりやすい。

収録曲

  1. Miniature (Gerry Beckley)
  2. Tin Man (Dewey Bunnell)
  3. Another Try (Gerry Beckley)
  4. Lonely People (Dan Peek / Catherine Peek)
  5. Glad to See You (Dewey Bunnell)
  6. Mad Dog (Gerry Beckley)
  7. Hollywood (Dewey Bunnell)
  8. Baby It's Up to You (Dan Peek)
  9. You (Dan Peek)
  10. Old Man Took (Dewey Bunnell)
  11. What Does It Matter (Gerry Beckley)
  12. In the Country (Dan Peek)

一般的な評価

Billboard 200で3位、米国でゴールド認定。「Tin Man」が全米4位、「Lonely People」が全米5位を記録した。George Martinとの最初の共同制作によって、Americaがヒット曲だけでなくアルバム全体の完成度を高めた作品として評価されている。

初めて聴くなら

最初は「Miniature」から「Tin Man」への流れを切らずに聴き、続いて「Lonely People」へ進むと、このアルバムの親しみやすさが分かる。その後「Another Try」「Old Man Took」を聴くと、ヒット曲以外のアレンジの細やかさが見えてくる。

次の一枚は、George Martinとの協働がさらに自然になり「Sister Golden Hair」を生んだ『Hearts』がおすすめ。初期のアコースティックなAmericaへ戻るなら『Homecoming』がよい。

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参考資料

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