Americaの『Homecoming』は、1972年11月に発表された2作目のスタジオ・アルバム。英国で制作したデビュー作『America』の成功後、米国へ拠点を移した三人が自らプロデュースした作品である。
全米8位を記録した「Ventura Highway」を中心に、アコースティック・ギター、三声のハーモニー、旅と風景を思わせる曲が並ぶ。デビュー作の少し影のあるフォークロックを受け継ぎながら、音は明るく輪郭が増した。Americaの「西海岸らしい響き」を一枚で味わうなら、最初に薦めたいアルバムだ。
なぜ『Homecoming』は名盤なのか
大ヒットしたデビュー作の型をなぞるだけでなく、三人のソングライターとしての違いを、引き締まった10曲にまとめた点が大きい。Dewey Bunnellの風景感、Gerry Beckleyの端正なポップ感覚、Dan Peekのカントリー寄りの推進力が、曲順の中で自然に入れ替わる。
アレンジはアコースティック・ギターを中心にしながら、エレクトリック・ギター、ピアノ、リズム隊を前作より鮮明に配置している。派手な音を重ねるのではなく、二本のギターと声の重なりがよく聞こえる余白を残しているため、軽やかでも薄くならない。
ドラマーのHal BlaineとベーシストのJoe Osbornが多くの曲に参加し、三人の演奏を支えた。二人は1960年代からロサンゼルスの録音を支えたセッション奏者で、ここでも歌を押しのけない簡潔なリズムを作っている。
デビュー作『America』との違い
デビュー作には、英国録音らしい内向的な空気と長めの器楽部分が残っていた。『Homecoming』では曲が短く整理され、リズムとコーラスの入り方も明快になっている。「A Horse with No Name」の乾いた荒野から、「Ventura Highway」の陽光と移動感へ、景色が大きく開けたように聞こえる。
一方で、明るい曲だけではない。「To Each His Own」や「Saturn Nights」には別れや孤独があり、「Moon Song」「Cornwall Blank」にはDewey Bunnellらしい幻想性が残る。爽快感と翳りが交互に現れるため、代表曲以外も繰り返し聴ける。
代表曲と聴きどころ
Ventura Highway
Dewey Bunnell作のオープニング曲。絡み合う二本のアコースティック・ギターと、言葉を使わないコーラスが、移動する風景のような感覚を生む。Bunnellによれば、少年時代に家族でカリフォルニアへ向かった際に見たVenturaの道路標識と、陽光の土地への憧れが着想になった。曲が描く自由のイメージは、Americaを代表する西海岸サウンドとして定着している。
Don’t Cross the River
Dan Peek作のカントリーロック。Henry Diltzのバンジョーが加わり、柔らかなアルバムの中に歯切れのよいリズムを持ち込む。三人の中でPeekが担った、土臭く力強い側面が分かりやすい。
Only in Your Heart
Gerry Beckley作のポップソング。ピアノとコーラスを軸に、短い時間の中でメロディを端正に組み立てている。後の「Daisy Jane」や「Sister Golden Hair」へつながる、Beckleyの作曲感覚を早い段階で確認できる曲だ。
Head and Heart
英国のシンガーソングライターJohn Martynの曲を取り上げた、本作唯一のカヴァー。控えめなリズムと柔らかな歌が原曲の親密さを生かしている。Americaが自作曲だけでなく、フォーク系ソングライターの曲を自分たちのハーモニーへ置き換える力を示した佳曲である。
California Revisited / Saturn Nights
「California Revisited」はDan Peek作の力強い演奏で、アルバム後半を引き締める。「Saturn Nights」はGerry Beckleyがピアノを中心に静かに閉じる曲。陽光の「Ventura Highway」で始まり、夜と旅の余韻で終わる流れが、アルバムとしてのまとまりを作っている。
収録曲
- Ventura Highway (Dewey Bunnell)
- To Each His Own (Gerry Beckley)
- Don't Cross the River (Dan Peek)
- Moon Song (Dewey Bunnell)
- Only in Your Heart (Gerry Beckley)
- Till the Sun Comes Up Again (Gerry Beckley)
- Cornwall Blank (Dewey Bunnell)
- Head & Heart (John Martyn)
- California Revisited (Dan Peek)
- Saturn Nights (Gerry Beckley)
一般的な評価
Billboard 200で9位を記録し、米国でプラチナ認定を受けた。「Ventura Highway」は全米8位となり、デビュー作に続く成功を決定づけた。大ヒット後の2作目で失速せず、Americaが一曲だけの存在ではないことを示したアルバムとして評価されている。
初めて聴くなら
まず「Ventura Highway」でギターとコーラスの基本形を聴き、次に三人の違いが出る「Don’t Cross the River」「Only in Your Heart」へ進むと分かりやすい。その後、アルバムを冒頭から通して聴くと、「Moon Song」の幻想性や「Saturn Nights」の静かな余韻まで含めた奥行きが見えてくる。
より素朴な初期を聴くなら『America』、三人の自主制作による実験を追うなら次作『Hat Trick』、George Martinによって洗練された中期へ進むなら『Holiday』がよい。各作品の違いはAmericaの70年代アルバム案内でまとめている。
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参考資料
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