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Harbor

発売
1977年2月15日
レーベル
Warner Bros. Records
プロデュース
George Martin
ジャンル
Folk Rock / Pop Rock

Americaの『Harbor』は、1977年2月15日に発表された7作目のスタジオ・アルバム。一言でいえば、ハワイの明るい風景の中で作られながら、三人組時代の終わりを感じさせる内省的な一枚である。

前作『Hideaway』に続いてGeorge Martinがプロデュースし、カウアイ島のKa Lae Kikiで録音された。アルバムはBillboard 200で21位。大きなヒット・シングルは生まれず、発表後にDan Peekが脱退したため、Gerry Beckley、Dewey Bunnell、Dan Peekの三人による最後のスタジオ作となった。

まず押さえたい3点

  • 音の特徴: 海辺の開放感より、短い曲に不安や孤独を凝縮した陰影の濃いサウンド。
  • まず聴く3曲: 荘厳な「God of the Sun」、端正な「Now She’s Gone」、緊張感のある「Are You There」。
  • おすすめする人: ヒット曲中心ではなく、三人組Americaが終盤に見せた変化とGeorge Martinの緻密な制作を追いたい人。

なぜ聴く価値があるのか

『Harbor』を聴く価値は、三人の作曲者が持つ個性と、その関係の終わりに近づいた空気を一枚で確認できる点にある。親しみやすいメロディは残っているが、前作までより歌詞と演奏に緊張感があり、単純なリゾート作品にはなっていない。

Gerry Beckleyは端正なポップを、Dewey Bunnellは抽象的な風景を、Dan Peekは率直なロックとバラードを持ち込む。三人の曲が交互に並ぶ基本形は変わらない一方、曲の短さと暗い色調によって、アルバム全体には落ち着かない余韻が残る。

代表的な大ヒットがないため、Americaの入門盤としての優先度は高くない。しかしDan Peek脱退前の最後の録音として、三人が曲とリード・ボーカルを分け合った体制の終わりを記録している。

ハワイのジャケットと不穏な12曲

録音は1976年末、ハワイ・カウアイ島のKa Lae KikiでRecord Plant Mobile Studioを使って行われた。George Martinがプロデュースとアレンジを担当し、Geoff Emerickがエンジニアを務めた。ミックスはロンドンのAIR Studiosで仕上げられている。

海辺で撮影されたジャケットと「Harbor」という題名は、穏やかで開放的な音を想像させる。実際には「Sergeant Darkness」「Monster」「Hurricane」といった題名が並び、歌詞や和音にも不安や別れの気配が強い。南国の写真と落ち着かない12曲が、意図とは限らないにせよ鮮明な対照を作っている。

David DickeyのベースとWillie Leacoxのドラムが三人を支え、Larry Carltonも「Are You There」でエレクトリック・シタールを演奏した。George Martinの制作は音を整えているが、内省的な色合いを薄めることなく、短い曲の細部を明瞭に見せている。

代表曲と聴きどころ

God of the Sun

アルバムの性格を最も明確に示す曲が、Gerry Beckley作の「God of the Sun」である。静かな導入からコーラスと鍵盤が広がり、海辺の光景を描きながらも、明るさだけでは終わらない荘厳さを持つ。

シングルとして大きなチャート成果は残さなかったが、アルバムの入口として最も分かりやすい。Americaらしい滑らかな歌声と、本作特有の重い空気を一曲で聴ける。

Now She’s Gone

Gerry Beckleyのポップ感覚を短い時間に凝縮した曲が「Now She’s Gone」である。別れを扱った簡潔なメロディと整ったコーラスが印象的で、「God of the Sun」より軽快に聞こえながら、喪失感は共通している。

派手な展開を使わず、二分半ほどで余韻を残す構成は『Harbor』全体の簡潔さを代表する。まず数曲だけ聴く場合にも選びやすい一曲である。

Slow Down

Dan Peekのロック寄りの側面を担うのが「Slow Down」である。強いリズムとギターを前に出し、穏やかなコーラス中心のAmericaとは異なる緊張感を加えている。

Peekは同じアルバムで「Don’t Cry Baby」「These Brown Eyes」のような柔らかな曲も書いた。「Slow Down」と聴き比べると、脱退前までバンドに持ち込んでいた作風の幅が分かる。

Are You There

Dewey Bunnellらしい浮遊感を、より暗い方向へ進めた曲が「Are You There」である。反復するフレーズとLarry Carltonのエレクトリック・シタールが、明確な物語よりも不穏な景色を作る。

「Ventura Highway」の開放感を期待すると意外に聞こえるが、Bunnellの風景的な作曲が明るい曲だけではないことを示す。『Harbor』の陰影を知るうえで外せない曲である。

Hurricane / Down to the Water

終盤の「Hurricane」と「Down to the Water」は、海を安らぎの場所ではなく、変化や危うさを含む景色として描く。Dan Peek作の「Hurricane」が緊張を高め、Dewey Bunnell作の「Down to the Water」が静かな余韻を残してアルバムを閉じる。

この二曲を続けて聴くと、明るいハワイの写真とは異なる本作の狙いがよく分かる。終盤まで通して聴く価値のある曲順である。

『Hideaway』との違い

『Hideaway』は、雪のCaribou Ranchで録音され、柔らかなコーラスと厚いアレンジを一つの落ち着いた景色にまとめていた。『Harbor』は録音場所を南国へ移しながら、音楽はむしろ暗く、短く、切迫した方向へ進んでいる。

『Hideaway』には「Today’s the Day」という明確な入口がある。一方の『Harbor』には大きなヒットがなく、Dan Peek脱退前の三人が最後に持ち寄った曲が並ぶ。二作を続けると、同じGeorge Martin体制でも、録音場所だけでは説明できない緊張の強まりが聞こえる。

収録曲

  1. God of the Sun (Gerry Beckley)
  2. Slow Down (Dan Peek)
  3. Don't Cry Baby (Dan Peek)
  4. Now She's Gone (Gerry Beckley)
  5. Political Poachers (Dewey Bunnell)
  6. Sarah (Gerry Beckley)
  7. Sergeant Darkness (Gerry Beckley)
  8. Are You There (Dewey Bunnell)
  9. These Brown Eyes (Dan Peek)
  10. Monster (Gerry Beckley)
  11. Hurricane (Dan Peek)
  12. Down to the Water (Dewey Bunnell)

一般的な評価

アルバムはBillboard 200で21位を記録したが、「God of the Sun」「Slow Down」「Don’t Cry Baby」は大きなシングル・ヒットにならなかった。直前の作品群と比べると商業的な勢いは弱まり、Americaの代表作として挙げられる機会も多くない。

一方で、三人組最後の作品という位置づけに加え、明るいジャケットと不安や別れを歌う内容の落差がある。全曲が同じ水準というタイプではないが、「God of the Sun」「Now She’s Gone」「Are You There」では、BeckleyとBunnellが異なる方法で暗い色調を作っている。

どんな人におすすめか

  • Americaの三人組時代を年代順に最後まで追いたい人
  • George MartinとGeoff Emerickによる精密な録音が好きな人
  • 明るいウエストコースト・サウンドの裏にある陰影を聴きたい人

反対に、Americaを初めて聴く人には『Homecoming』『Hearts』のほうが代表曲と作風をつかみやすい。本作は入口というより、主要作を聴いた後にバンドの変化を確かめる一枚として向いている。

初めて聴くなら

まず「God of the Sun」「Now She’s Gone」「Are You There」の三曲で、BeckleyとBunnellの異なる陰影を聴く。次に「Slow Down」と「Don’t Cry Baby」でDan Peekの幅を確かめ、最後は「Hurricane」から「Down to the Water」まで続けると、作品全体の暗い流れが見えやすい。

前の一枚へ戻るなら『Hideaway』、三人の曲とGeorge Martinの編曲がヒットへ結びついた時期を先に知るなら『Hearts』がおすすめ。全体の順序はAmericaの70年代アルバム案内で確認できる。

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参考資料

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