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Hideaway

発売
1976年4月9日
レーベル
Warner Bros. Records
プロデュース
George Martin
ジャンル
Folk Rock / Pop Rock

Americaの『Hideaway』は、1976年4月9日に発表された6作目のスタジオ・アルバム。一言でいえば、大きなヒット曲よりも、雪のCaribou Ranchで作られた静かな統一感を味わう一枚である。

前作『Hearts』に続いてGeorge Martinがプロデュースし、コロラド州Nederlandで録音された。全米23位の「Today’s the Day」と全米75位の「Amber Cascades」を収録。『Hearts』ほど大きなポップ・ヒットは生まれなかったが、アルバムはBillboard 200で11位に入り、米国でゴールド認定を受けた。

まず押さえたい3点

  • 音の特徴: 三人の歌とアコースティック・ギターに、George Martinの鍵盤とオーケストレーションを重ねた厚みのあるサウンド。
  • まず聴く3曲: 穏やかな「Today’s the Day」、風景的な「Amber Cascades」、物語性のある「Watership Down」。
  • おすすめする人: 『Hearts』を聴いた後、ヒット曲だけでなく三人の作曲とアルバム全体の流れを深く味わいたい人。

なぜ聴く価値があるのか

『Hideaway』を聴く価値は、親しみやすい曲を揃えながら、アルバム全体に少し冷たく静かな空気を通している点にある。雪に囲まれたCaribou Ranchで撮影されたジャケットの印象と、陰影のある曲調がよく重なる。

Gerry Beckleyの端正なポップ、Dewey Bunnellの風景的な曲、Dan Peekの率直なメロディという三人の違いは保たれている。その一方で、「Hideaway Part I」と「Part II」の短いインストゥルメンタルが後半を囲み、13曲を一つの景色として見せる構成になっている。

「Sister Golden Hair」のような一曲でアルバムを引っ張る作品ではない。むしろ「Lovely Night」「Amber Cascades」「Watership Down」「Today’s the Day」と曲調を移りながら、三人組Americaの成熟したアンサンブルを味わう作品である。

Caribou Ranchで作った冬のサウンド

録音は1976年2月16日から28日まで、コロラドの山中にあったCaribou Ranchで行われた。George Martinがプロデュース、アレンジ、指揮を担当し、Geoff Emerickがエンジニアを務めている。David DickeyのベースとWillie Leacoxのドラムも、前作までに続いてバンドの土台を支えた。

Martinの仕事は、曲を大げさに飾ることより、三人の異なる作風を同じアルバムの中へ収めることに向いている。「She’s Beside You」と「Hideaway Part I」では自らピアノも演奏。柔らかなコーラスの背後に鍵盤や楽器の層を置き、初期の乾いたフォークロックより厚い音を作っている。

山中のスタジオという閉じた環境も、本作のまとまりに影響したように聞こえる。翌作『Harbor』がハワイの開放的な景色を選んだのに対し、『Hideaway』には内側へ沈み込むような静けさがある。

代表曲と聴きどころ

Today’s the Day

本作で最も入りやすい曲が、Dan Peek作の「Today’s the Day」である。簡潔なアコースティック・ギターと温かなコーラスで進むラブソングで、派手な展開を使わずに期待感を積み重ねていく。全米23位、Adult Contemporaryチャートでは2週にわたり1位を記録した。

Americaの柔らかな側面を最も分かりやすく伝える曲であり、『Hideaway』の入口として聴きやすい。一方で「Sister Golden Hair」より抑制された作りのため、アルバム全体の落ち着いた性格もよく表している。

Amber Cascades

Dewey Bunnellらしい風景感覚を最もよく表す曲が「Amber Cascades」である。流れるようなギターと重なり合うボーカルが、題名どおり光や水の動きを思わせる。明確な物語よりも言葉の響きと風景を組み合わせている。

シングルは全米75位、Adult Contemporaryチャート17位。大ヒットではないが、「Ventura Highway」「Tin Man」から続くBunnellの風景感覚を、より滑らかなGeorge Martin期のサウンドで聴ける。

Watership Down

アルバム志向の深さを示すのが、Gerry Beckley作の「Watership Down」である。約5分と本作で最も長く、ゆっくり広がるメロディとコーラスがアルバム中盤の中心を作る。題名と歌詞はRichard Adamsの小説『Watership Down』の世界を思わせ、危険を越えて故郷を目指す感覚を静かに描いている。

シングル向けの簡潔さより、アルバムの中で時間をかけて展開する曲である。Beckleyのポップセンスがバラードだけでなく、物語性のある構成にも向いていたことが分かる。

Jet Boy Blue

アルバムのロック面を担うのが、Dan PeekとCatherine Peekの共作「Jet Boy Blue」である。硬めのギターと強いリズムを前に出し、穏やかな曲が多い本作に速度と緊張感を加えている。「Today’s the Day」との表情の違いが、Peekの作風の幅を示す。

Hideaway Part I / Part II

作品全体を一つに結ぶのが、Dewey Bunnell作の二つのインストゥルメンタルである。Part Iはアルバム後半への入口、Part IIは余韻を残す終曲として配置されている。ヒット曲を並べるだけではなく、一枚を通して聴かせようとするGeorge Martin期のアルバム志向がよく表れている。

『Hearts』との違い

『Hearts』は、「Daisy Jane」で始まり「Sister Golden Hair」へ到達する、メロディの強さと曲順の起伏が明快な作品だった。『Hideaway』はそこからさらに音を厚くし、個々のヒットよりアルバム全体の色合いを重視している。

最初の一枚としての分かりやすさなら『Hearts』が上だが、三人の作者の違いやGeorge Martinのアレンジを深く聴くなら『Hideaway』が面白い。雪のCaribou Ranchで録音した本作と、翌年ハワイで制作した『Harbor』を続けると、場所の対照も含めて三人組時代末期の変化が見える。

収録曲

  1. Lovely Night (Gerry Beckley)
  2. Amber Cascades (Dewey Bunnell)
  3. Don't Let It Get You Down (Dewey Bunnell)
  4. Can't You See (Dan Peek)
  5. Watership Down (Gerry Beckley)
  6. She's Beside You (Dan Peek)
  7. Hideaway Part I (Dewey Bunnell)
  8. She's a Liar (Gerry Beckley)
  9. Letter (Dewey Bunnell)
  10. Today's the Day (Dan Peek)
  11. Jet Boy Blue (Dan Peek / Catherine Peek)
  12. Who Loves You (Gerry Beckley)
  13. Hideaway Part II (Dewey Bunnell)

一般的な評価

Billboard 200で11位を記録し、米国でゴールド認定を受けた。「Today’s the Day」はAdult Contemporaryチャート1位となった一方、ポップ・チャートでは前作の代表曲ほど上位へ届かなかった。そのためAmericaの主要作の中では見落とされやすいが、アルバムとしての統一感と三人の作曲バランスは保たれている。

初期のアコースティックな簡潔さからは距離があり、George Martinの精密な制作が好みを分ける部分もある。しかし『Holiday』『Hearts』で使った鍵盤、ストリングス、厚いコーラスを、大きなヒット曲に頼らず13曲の流れへまとめている。

どんな人におすすめか

  • 「Sister Golden Hair」以外の三人組Americaも掘り下げたい人
  • George Martinによる緻密なポップ・アレンジが好きな人
  • 派手な一曲より、落ち着いたアルバム全体の空気を楽しみたい人

反対に、Americaを初めて聴く人には『Homecoming』『Hearts』のほうが入口として分かりやすい。そこから本作へ進むと、初期の軽やかさが中期の厚いスタジオ・サウンドへ変化したことを実感できる。

初めて聴くなら

まず「Today’s the Day」と「Amber Cascades」で二人の作者の違いを聴き、次に「Watership Down」と「Jet Boy Blue」へ進むと、静と動の幅が分かる。その後は「Hideaway Part I」から最後まで続けて聴くと、本作が曲単位だけでなく後半の流れを意識して作られたことが見えてくる。

前の一枚へ戻るなら、Americaの中期を最も分かりやすく代表する『Hearts』がおすすめ。George Martin期の始まりは『Holiday』、三人の素朴なフォークロックは『Homecoming』で聴ける。

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参考資料

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