Warren Zevonの『Warren Zevon』は、1976年5月18日に発表されたメジャー・レーベルでの再出発作。1969年の『Wanted Dead or Alive』以来のソロ・アルバムで、友人のJackson Browneがプロデュースした。
Waddy Wachtel、David Lindley、Bob Glaubらの演奏に、Don Henley、Glenn Frey、J.D. Souther、Lindsey Buckingham、Stevie Nicks、Carl Wilson、Bonnie Raittらが加わった。1970年代ロサンゼルスの人脈が、まだ広く知られていなかったZevonの曲を支えている。
まず押さえたい3点
- 歌われる人物: ロサンゼルスで成功する人物ではなく、酒、金、孤独、終わりかけた関係を抱えて行き詰まる人物を描く。
- 制作の中心: Jackson Browneがプロデュースし、Waddy Wachtelをはじめ西海岸の演奏者と歌手が参加した。
- まず聴く3曲: 「Poor Poor Pitiful Me」「Carmelita」「Desperados Under the Eaves」。
西海岸の華やかさを裏返す
同時期のEaglesやJackson Browneの作品にも孤独や失敗は登場するが、Zevonの人物はさらに危うい。自分で問題を起こしながら不運を嘆き、酒に逃げ、深夜の街をさまよう。Zevonはその人物を断罪せず、かといって美化もしない。
音は暗さ一辺倒ではない。「Poor Poor Pitiful Me」は歯切れのよいロック、「Carmelita」は簡潔なカントリー、「Mohammed’s Radio」はゴスペルを思わせるコーラスを持つ。聴きやすい編曲と厳しい物語の落差が、アルバムを印象深くしている。
Jackson Browneが整えた再出発
Zevonの曲は歌詞と場面が細かく、一人で弾き語るだけでも成立する。Browneはそこへ過剰な演出を加えず、曲ごとに必要な人物を集めた。
「Frank and Jesse James」ではDavid Lindleyのバンジョーとフィドル、Phil Everlyのハーモニーを配置。「Mohammed’s Radio」ではLindsey BuckinghamとStevie Nicks、「The French Inhaler」ではDon HenleyとGlenn Freyが声を重ねる。最後の「Desperados Under the Eaves」ではCarl Wilson、Billy Hinsche、Browneらのコーラスとストリングスが、ホテルの一室から始まる歌を大きく広げる。
参加者の名前が目立つ一方で、中心は常にZevonの声とピアノにある。この距離感がBrowneのプロデュースの良さである。
Linda Ronstadtが曲を広めた
Linda Ronstadtは本作から「Hasten Down the Wind」「Poor Poor Pitiful Me」「Carmelita」「Mohammed’s Radio」を取り上げた。「Hasten Down the Wind」は1976年のアルバム表題曲となり、「Poor Poor Pitiful Me」はシングルとして全米31位を記録した。
Ronstadtの録音は声とバンドの力を前へ出し、Zevonの曲を広い聴衆へ届けた。一方、本作の本人版には、語り手が自分の弱さを分かっていながら抜け出せない感触が残る。両方を聴くことで、曲そのものの強さが分かる。
代表曲と聴きどころ
Frank and Jesse James
西部の無法者を題材にしたオープニング曲。ピアノ、フィドル、バンジョー、Phil Everlyのハーモニーで、古い物語を1970年代のシンガーソングライター作品として組み直している。
Hasten Down the Wind
自由になりたい相手と、関係をつなぎ止めたい人物の会話を第三者の視点から描く。Zevonによれば、個人的すぎるため一人称では書けなかった曲である。David Lindleyのスライド・ギターとPhil Everlyのハーモニーが、感情を大げさにせず支える。
Poor Poor Pitiful Me
不運を嘆く人物を、誇張と自嘲で描いたロック。Wachtelのギター、Lindleyのフィドル、Bobby Keysのサックスが加わり、歌詞の情けなさとは対照的に演奏は快活である。
Mohammed’s Radio
行き場のない人々がラジオから聞こえる音楽を待つ場面を、ゴスペル風のコーラスで歌う。Wachtel、David Lindley、Bobby Keysに加え、Lindsey BuckinghamとStevie Nicksがハーモニーで参加した。
Carmelita
Echo Parkにいる語り手が、EnsenadaのCarmelitaへ呼びかける。依存と孤立を扱いながら、演奏は簡潔で静かだ。Zevonの曲がカントリー系の歌手にも取り上げられてきた理由が分かる。
Desperados Under the Eaves
Hollywood Hawaiian Hotelに滞在し、酒と金銭的不安に追い詰められた人物を描く。空調の低い音からコーラスとストリングスが広がり、個人的な行き詰まりをロサンゼルス全体の風景へ変える。本作の終曲であり中心曲である。
収録曲
- Frank and Jesse James
- Mama Couldn't Be Persuaded
- Backs Turned Looking Down the Path
- Hasten Down the Wind
- Poor Poor Pitiful Me
- The French Inhaler
- Mohammed's Radio
- I'll Sleep When I'm Dead
- Carmelita
- Join Me in L.A.
- Desperados Under the Eaves
一般的な評価
発売当時のBillboard 200では189位にとどまり、大きな商業的成功にはならなかった。しかしLinda Ronstadtが4曲を録音し、参加した音楽家や批評家からの評価も積み重なったことで、Zevonの代表作として定着した。
Zevonの公式サイトは、1970年代ハリウッドを記録した「The French Inhaler」、LAのホテルを舞台にした「Desperados Under the Eaves」など、本人の回想と参加者を曲ごとに掲載している。人脈の豪華さだけでなく、ロサンゼルスを描いた作品として読み直せるアルバムだ。
初めて聴くなら
最初は「Poor Poor Pitiful Me」で音の入りやすさを確かめ、次に「Carmelita」で声と物語を聴く。最後に「Desperados Under the Eaves」まで進むと、短い人物描写を大きな風景へ変えるZevonの作り方が分かる。
より直接的なロックと代表曲を聴くなら、次作『Excitable Boy』へ進むとよい。
関連ページ
- アーティスト:Warren Zevon
- アルバム:Linda Ronstadt『Hasten Down the Wind』
- アルバム:Linda Ronstadt『Simple Dreams』
- 人物:Waddy Wachtel
- アルバム:Excitable Boy
参考資料
配信で聴く
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