Crosby, Stills & Nash の前作 『Crosby, Stills & Nash』 に Neil Young を迎え、CSNYとして発表した最初のスタジオ・アルバム。1970年3月11日にリリースされ、全米アルバム・チャート1位を獲得した。
前作の精密なコーラスを受け継ぎながら、Neil Youngの乾いた歌声とギター、Stephen Stillsとの緊張感のある演奏が加わった。四人の曲を均一にまとめるのではなく、それぞれの個性を一枚の中でぶつけたところに『Déjà Vu』の面白さがある。
なぜ『Déjà Vu』は名盤なのか
最大の魅力は、完成度の高いグループ作品でありながら、四人のソングライターの違いがはっきり聴こえることだ。Graham Nashは親密で親しみやすい曲、David Crosbyは自由で内省的な曲、Stephen Stillsは構築力のある曲、Neil Youngは孤独と荒涼感を帯びた曲を持ち込んだ。
制作も一枚を全員で一気に演奏する方式ではなく、多くの曲を各作者が中心となって仕上げる持ち寄り型だった。そのため曲ごとに景色は変わるが、声が重なった瞬間にCSNYのアルバムとして結びつく。アコースティックな親密さとエレクトリックな迫力が同居し、フォークロックからカントリーロックまでを自然につないでいる。
CSNからCSNYへ、何が変わったのか
Neil Youngの加入で最も大きく変わったのは、音の粗さと振幅だ。前作の洗練された三声ハーモニーに、「Helpless」の脆さや「Country Girl」の暗いドラマ、「Everybody I Love You」のギターの熱が加わった。
リズム隊にはDallas TaylorとGreg Reevesが参加。曲によって演奏者の組み合わせは異なるものの、バンドとしての重量感は前作より明らかに増している。美しいコーラスだけでなく、四人が同じ場所にいることで生まれる緊張まで作品の一部になった。
主要曲の聴きどころ
Carry On
Stephen Stills作のオープニング曲。鋭いアコースティック・ギター、幾重にも重なる声、後半のリズム変化が一曲の中で展開する。前作のハーモニーを引き継ぎながら、より大きなスケールへ踏み出したことを最初に示す曲だ。
Teach Your Children
Graham Nashらしい簡潔で温かなメロディを持つ代表曲。Jerry Garciaが弾くペダル・スティールがカントリー色を添え、世代間の理解を歌う言葉をやわらかく包む。親しみやすさと演奏の細やかさが両立している。
Almost Cut My Hair / Helpless
「Almost Cut My Hair」はDavid Crosbyの切迫した歌と荒々しい演奏が中心で、整ったコーラス・グループという印象を大きく揺さぶる。一方、Neil Youngの「Helpless」は故郷を思わせる情景と頼りなさを反復の中に閉じ込めた曲。隣り合う二曲だけでも、このアルバムの感情の幅が分かる。
Woodstock
Joni Mitchellの曲を、重いエレクトリック・ギターと厚いハーモニーによるロック・ナンバーへ作り替えたカヴァー。CSNY版は全米11位を記録し、フェスティバルそのものを象徴する歌として広く知られるようになった。
Déjà Vu / Our House
タイトル曲「Déjà Vu」はDavid Crosby独特のリズム感と浮遊するハーモニーが印象的で、John Sebastianがハーモニカで参加している。その直後の「Our House」は、Graham Nashが日常の幸福をまっすぐ歌う小品。複雑さと素朴さを並べる曲順も鮮やかだ。
Country Girl
Neil Youngの複数の楽想を組曲のようにつないだ大作。陰影の濃いピアノとコーラスが徐々に広がり、アルバム終盤に重い余韻を残す。後のNeil Young作品へ進む入口としても重要な一曲である。
収録曲
- Carry On (Stephen Stills)
- Teach Your Children (Graham Nash)
- Almost Cut My Hair (David Crosby)
- Helpless (Neil Young)
- Woodstock (Joni Mitchell カヴァー)
- Déjà Vu (David Crosby)
- Our House (Graham Nash)
- 4 + 20 (Stephen Stills)
- Country Girl (Neil Young)
- Everybody I Love You (Stephen Stills / Neil Young)
一般的な評価
米国ではアルバム・チャート1位、英国では5位を記録。「Woodstock」は全米11位、「Teach Your Children」は16位、「Our House」は30位に入った。米国で7×プラチナに認定され、2023年には米国議会図書館のNational Recording Registryにも登録されている。
発売当時のヒットにとどまらず、フォーク由来の歌、カントリーの響き、エレクトリックなロック、複雑なハーモニーを一枚に共存させた作品として聴き継がれてきた。四人の結束だけでなく対立や距離まで音に刻まれていることが、整いすぎない長寿命の名盤にしている。
初めて聴くなら
まずは親しみやすい「Teach Your Children」と「Our House」、次にCSNYの力強さが出た「Carry On」と「Woodstock」を聴くと入りやすい。その後に「Helpless」「Almost Cut My Hair」「Country Girl」へ進むと、四人の個性とアルバムの奥行きが見えてくる。
前作と続けて聴く場合は、『Crosby, Stills & Nash』 の「Suite: Judy Blue Eyes」から本作の「Carry On」へつなぐと、三人の精密なハーモニーがNeil Youngの加入によってどう変化したかをつかみやすい。
関連ページ
- アーティスト:Crosby, Stills, Nash & Young
- アーティスト:Crosby, Stills & Nash
- アルバム:Crosby, Stills & Nash
- アーティスト:Neil Young
- 特集:CSNとCSNY、最初に聴くべき名盤とハーモニーの違い
参考資料
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