Excitable Boy cover

Excitable Boy

発売
1978年1月
レーベル
Asylum Records
プロデュース
Jackson Browne / Waddy Wachtel
ジャンル
Rock / Singer-Songwriter

Warren Zevonの『Excitable Boy』は、1978年1月に発表されたアルバム。Jackson BrowneとWaddy Wachtelが共同プロデュースし、「Werewolves of London」のヒットによってZevonの名前を広い聴衆へ届けた。

全米8位を記録し、プラチナ認定を受けた最大の商業的成功作である。ただし、陽気に聞こえる代表曲だけで全体は判断できない。戦争、殺人、失恋、歴史、無責任な冒険を扱う曲が並び、親しみやすいロックの中にZevonの冷たい視線が残っている。

まず押さえたい3点

  • 最大の成功作: アルバムは全米8位、「Werewolves of London」は全米21位を記録した。
  • 曲ごとに語り手が変わる: 傭兵、犯罪者、怪物、失恋した人物など、Zevon本人とは限らない人物を演じ分ける。
  • まず聴く3曲: 「Werewolves of London」「Accidentally Like a Martyr」「Lawyers, Guns and Money」。

「Werewolves of London」とアルバム全体の違い

「Werewolves of London」は、反復するピアノ、遠吠えのコーラス、奇妙な場面を並べたユーモラスな曲である。John McVieのベースとMick Fleetwoodのドラムが参加し、簡潔な演奏が言葉を前へ出している。

ところが、その前には戦争と復讐を扱う「Roland the Headless Thompson Gunner」、暴力を明るい調子で語る表題曲がある。後半には失恋歌「Accidentally Like a Martyr」、メキシコ史を背景にした「Veracruz」、自業自得の危機から父親へ助けを求める「Lawyers, Guns and Money」が続く。

笑える一曲を入口に、笑えない物語まで聴かせる曲順になっている。

Waddy WachtelとLAの演奏者

前作『Warren Zevon』ではJackson Browneが多くの歌手と演奏者を集めた。本作ではWaddy Wachtelが共同プロデューサーとなり、ギターとアレンジの面でも中心へ進んだ。

リズム隊は曲ごとに入れ替わる。「Werewolves of London」ではJohn McVieとMick Fleetwood、「Accidentally Like a Martyr」ではLeland SklarとRuss Kunkel、「Nighttime in the Switching Yard」ではBob GlaubとJeff Porcaroが演奏した。Danny Kortchmar、Kenny Edwards、Rick Marottaも参加している。

The Section、Fleetwood Mac、Linda Ronstadt周辺の演奏者が同じ一枚に集まりながら、各バンドの音を真似るのではなく、Zevonの短い物語に合わせて編成を変えている。

代表曲と聴きどころ

Johnny Strikes Up the Band

ピアノとWachtelのギターで勢いよく始まるオープニング曲。音楽が鳴れば人が集まり、空気が変わるという単純な高揚を歌う。重い題材が続くアルバムの入口を開く役割を持つ。

Roland the Headless Thompson Gunner

ZevonとDavid Lindellの共作。アフリカで戦う傭兵と、裏切りへの復讐を国際情勢の固有名詞を交えて語る。荒唐無稽な幽霊譚でありながら、戦争が繰り返される構造も残る。

Werewolves of London

Zevon、Waddy Wachtel、LeRoy Marinellの共作。軽快なピアノと簡潔なリズムに、ロンドンを歩く狼男の場面を次々と置く。最大のヒット曲だが、物語を説明しすぎず、断片の面白さだけで曲を成立させた点がZevonらしい。

Accidentally Like a Martyr

アルバム中盤の静かな失恋歌。強い物語設定や冗談を使わず、終わった関係が時間とともに硬く残る感覚を歌う。Leland Sklar、Russ Kunkel、Wachtelの演奏とKarla Bonoffらのハーモニーが、声を包む。

Nighttime in the Switching Yard

列車の操車場を題材にしたファンク寄りの曲。Danny Kortchmar、Bob Glaub、Jeff Porcaroが参加し、Zevon作品としては珍しく反復するリズムを中心に置く。アルバムの曲調を大きく切り替える一曲である。

Lawyers, Guns and Money

海外でトラブルを重ねた語り手が、自分を無実の傍観者と称して父親へ救援を求める。短い言葉と強いギターで、自業自得と被害者意識を同時に笑う。本作を締める代表曲である。

収録曲

  1. Johnny Strikes Up the Band
  2. Roland the Headless Thompson Gunner
  3. Excitable Boy
  4. Werewolves of London
  5. Accidentally Like a Martyr
  6. Nighttime in the Switching Yard
  7. Veracruz
  8. Tenderness on the Block
  9. Lawyers, Guns and Money

前作『Warren Zevon』との違い

前作はロサンゼルスのホテルやバーにいる人物を細かく描き、ストリングスと多数のコーラスで物語を広げた。『Excitable Boy』では演奏がより直接的になり、曲の場面もロンドン、アフリカ、メキシコ、中米へ広がっている。

一方で「Accidentally Like a Martyr」のような静かな曲も残る。音が派手になったというより、短いロック、物語歌、バラードの差を明確にし、9曲で聴きやすく整理した作品といえる。

一般的な評価

Billboard 200で8位を記録し、米国でプラチナ認定を受けた。「Werewolves of London」はZevon唯一の全米Top 40シングルとなり、その後も代表曲として定着した。

商業的な突破口であると同時に、皮肉、歴史への関心、暗い題材、端正なバラードを一枚に収めた作品でもある。一曲だけが突出したヒット盤ではなく、Zevonの作風を最も短時間で把握できるアルバムとして評価されている。

初めて聴くなら

まず「Werewolves of London」でピアノとリズムを聴き、「Accidentally Like a Martyr」で静かな側面を確かめる。最後に「Lawyers, Guns and Money」へ進むと、物語、ユーモア、ロック演奏が一つになる。

その後に『Warren Zevon』へ戻ると、「Carmelita」「Desperados Under the Eaves」など、ヒット前に完成していた曲の深さが見えやすい。

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参考資料

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