Warren Zevon

ウォーレン・ジヴォン
活動開始
1966年
出身
ロサンゼルス, カリフォルニア(活動拠点)
Warren Zevon のジャケット 『Warren Zevon』(1976)

Warren Zevon(ウォーレン・ジヴォン)は、1970年代のロサンゼルスで評価を確立したシンガーソングライター。「Werewolves of London」の軽妙な印象で知られる一方、酒や薬物から抜け出せない人物、別れを受け入れられない男女、危険な仕事に生きる男たちも歌にした。深刻な題材を大げさに嘆かず、皮肉と乾いた笑いを交えて描いた。

Jackson Browne(ジャクソン・ブラウン)、Linda Ronstadt(リンダ・ロンシュタット)、Waddy Wachtel(ワディ・ワクテル)らとの関係が深く、EaglesやFleetwood Macのメンバーも録音に参加した。西海岸の明るいイメージとは異なる角度から、同じ時代と街を描いた人物である。

まず押さえたい3点

  • 歌詞の視点 ── 成功者ではなく、失敗し、言い訳をし、それでも生き延びようとする人物を描いた。
  • LA人脈の結節点 ── Jackson Browne、Linda Ronstadt、Waddy Wachtel、Eagles周辺の演奏者が作品を支えた。
  • 入口は2枚 ── 1976年の『Warren Zevon』で作家性を知り、1978年の『Excitable Boy』で代表曲とバンド演奏を聴ける。

華やかなロサンゼルスの裏側を描く

1970年代のウエストコースト・ロックには、道路、陽光、自由、成功を思わせる曲が多い。Zevonも同じロサンゼルスにいたが、彼が見たのはホテルの一室、深夜のバー、金に困る人、関係を壊した男女、トラブルから逃げる人物だった。

ただし、音楽まで暗く閉じてはいない。ピアノを中心に、覚えやすいメロディ、厚いコーラス、歯切れのよいロック・バンドを組み合わせた。歌詞を追わなくても曲として聴け、意味を知ると最初の印象が変わる。その二重性がZevonの特徴である。

Jackson Browneが支えた1976年の再出発

Zevonは1960年代から作曲と演奏を続け、The Everly Brothersのツアーにも参加したが、最初のソロ作『Wanted Dead or Alive』は成功しなかった。一時期スペインで演奏したあとロサンゼルスへ戻り、Jackson Browneの支援を受けてAsylum Recordsと契約した。

Browneがプロデュースした『Warren Zevon』には、Waddy Wachtel、David Lindley、Bob Glaub、Lindsey Buckingham、Stevie Nicks、Don Henley、Glenn Frey、J.D. Souther、Carl Wilsonらが参加した。豪華な名前を並べるためではなく、曲ごとに必要な声と楽器を配置している。

アルバムは当初大きく売れなかったが、同じ街の歌手や演奏者から高く評価された。Zevonが「ミュージシャンに愛された作家」と呼ばれる理由が、この一枚に表れている。

Linda Ronstadtが広めた4曲

Linda Ronstadtは「Hasten Down the Wind」を1976年作の表題曲に選び、その後「Poor Poor Pitiful Me」「Carmelita」「Mohammed’s Radio」も取り上げた。Zevon自身の盤が広い聴衆へ届く前に、Ronstadtの歌を通じて曲が知られていった。

両者の違いも面白い。Zevon版では語り手の弱さや皮肉が残り、Ronstadt版では声とバンドの強さによって輪郭の明快なロックになる。同じ曲を聴き比べると、作曲者と歌い手の役割が分かる。

Waddy Wachtelとの制作チーム

Waddy WachtelはZevonの主要なギタリストであり、1978年の『Excitable Boy』ではJackson Browneと共同プロデュースも担当した。「Werewolves of London」はZevon、Wachtel、LeRoy Marinellの共作である。

Wachtelは歌の隙間を埋めるだけでなく、短いギターの反復や強いリフによって、複雑な物語をロックとして聴きやすくした。この関係はThe Immediate Familyのメンバー紹介からも辿れる。

最初に聴きたい代表曲

  • Hasten Down the Wind ── 離れたい気持ちと留まりたい気持ちが揺れる関係を、第三者の視点から描く。
  • Poor Poor Pitiful Me ── 不運を嘆く語り手を、誇張と自嘲を交えて歌う。Linda Ronstadt版との比較も面白い。
  • Carmelita ── Echo ParkとEnsenadaを背景に、依存と孤立を静かなカントリー調で描く。
  • Desperados Under the Eaves ── ロサンゼルスのホテルで追い詰められた人物を、壮大な編曲で包む初期の到達点。
  • Werewolves of London ── 軽快なピアノとユーモラスな言葉で知られる最大のヒット。John McVieとMick Fleetwoodが演奏した。
  • Lawyers, Guns and Money ── 自ら招いた国際的なトラブルを、被害者のように語る人物を短いロックにまとめた。

「Werewolves of London」だけではない

「Werewolves of London」は全米21位となったZevon最大のシングル・ヒットで、現在も最も知られている。しかし、これだけを聴くと、風変わりなコミックソングの作家に見えてしまう。

『Excitable Boy』には、戦争と復讐を扱う「Roland the Headless Thompson Gunner」、失恋を静かに描く「Accidentally Like a Martyr」、歴史を題材にした「Veracruz」も入っている。題材の振れ幅と、曲ごとに語り手を変える技術まで含めてZevonの本領である。

最初に聴くアルバムはどれ?

  • LA人脈と作家性を知るなら ── 『Warren Zevon』。周囲の音楽家がZevonの曲を世に出そうとした一枚。
  • 代表曲から入るなら ── 『Excitable Boy』。「Werewolves of London」「Lawyers, Guns and Money」を収録。
  • 晩年まで進むなら ── 『The Wind』。死を目前に制作し、Jackson Browne、Don Henley、Joe Walsh、Bruce Springsteenらが参加した最終作。

2025年のロックの殿堂入り

Zevonは2025年、ロックの殿堂にMusical Influence部門で選出された。大きなヒットを何曲も持つスターというより、同業のソングライターへ長く影響を与えた人物としての選出である。

生前の商業成績だけでは測れなかった評価が、作品と他の歌手によるカバーを通じて残った。West Coast Rock Guideで扱う意味も、知名度の大小より、この人脈と影響の広がりにある。

参考資料

変遷

  1. 1947 1月24日、シカゴに生まれる。少年期をカリフォルニアで過ごす
  2. 1966 Violet SantangeloとのデュオLyme & Cybelleでシングルを発表
  3. 1969 最初のソロ・アルバム『Wanted Dead or Alive』を発表
  4. 1976 Jackson Browneプロデュースの『Warren Zevon』を発表
  5. 1978 『Excitable Boy』が全米8位。「Werewolves of London」が全米21位を記録
  6. 1987 『Sentimental Hygiene』で本格的に活動を再開
  7. 2002 中皮腫の診断を公表。David Lettermanの番組へ最後の出演
  8. 2003 最終作『The Wind』発表。9月7日に56歳で死去
  9. 2025 ロックの殿堂にMusical Influence部門で選出

Discography

最終更新: