The Doobie Brothersの『The Captain and Me』は、1973年3月2日に発表された3作目のスタジオ・アルバム。日本盤題は『キャプテン・アンド・ミー』である。「Long Train Runnin’」と「China Grove」を収録し、前期Doobie Brothersを代表する一枚となった。
二曲のヒットだけでなく、Tom Johnston(トム・ジョンストン)のriffとfunk、Patrick Simmons(パトリック・シモンズ)のcountry/folk、二人のdrummerと厚いコーラスが一枚に共存する。バンドの特徴を最も短い距離で知ることができる作品である。
まず押さえたい3点
- 作品の特徴: ツインギターとツインドラムの厚い演奏へ、funkの反復、country、acoustic guitar、複数の歌声を組み込んだ。
- まず聴く3曲: grooveで進む「Long Train Runnin’」、硬いriffの「China Grove」、Patrick Simmons作の「South City Midnight Lady」。
- おすすめする人: Michael McDonald加入前のDoobie Brothersを、ヒット曲とアルバム曲の両方から知りたい人。
ツインドラムとツインギターが作る厚さ
Tom JohnstonとPatrick Simmonsのguitarに、John Hartman(ジョン・ハートマン)とMichael Hossack(マイケル・ホサック)のdrums、Tiran Porter(タイラン・ポーター)のbassが重なる。全員が同じ拍を強く叩くだけでなく、一方のdrumsが基本を保ち、もう一方が細かな動きを加える。
コーラスも一人の主旋律を飾るだけではない。複数の声を厚く重ね、guitarと同じように曲の推進力を作る。「Natural Thing」「Without You」では、演奏と声が一体になって前へ進む。
Ted Templeman(テッド・テンプルマン)は、live bandの勢いを残しながら、各楽器を聞き分けられるように整理した。音数は多いが、riff、rhythm、chorusの役割が明確である。
Tom JohnstonとPatrick Simmonsの対照
Tom Johnstonの曲は、短いguitar riffと反復するrhythmを中心に進む。「Long Train Runnin’」「China Grove」「Natural Thing」では、歌の前から曲の性格が分かる。
Patrick Simmonsの「Clear as the Driven Snow」と「South City Midnight Lady」は、acoustic guitarやcountryの響きを使い、速度と空間を変える。Jeff “Skunk” Baxter(ジェフ・“スカンク”・バクスター)のsteel guitar、Little FeatのBill Payne(ビル・ペイン)によるkeyboardsも、この側面を支えている。
二人の曲を交互に置くことで、アルバムはhard rockだけにも、country rockだけにもならない。この幅が、次作『What Were Once Vices Are Now Habits』の「Black Water」へつながる。
代表曲と聴きどころ
Long Train Runnin’
もとはliveで繰り返し演奏していたinstrumentalに近い曲で、Ted Templemanの提案を受けてTom Johnstonが歌詞を加えた。acoustic guitarの細かなcuttingとbass、drumsの反復が曲を進める。
hard rockの重さよりfunkのgrooveが中心で、コーラスが短く入ることでradio向けの形になった。全米8位を記録し、バンド最大級の定番曲となった。
China Grove
Tom Johnstonの硬いguitar riffで始まるpower rock。pianoとツインドラムを加え、riffの反復だけで単調にならないように作られている。
全米15位を記録した。「Long Train Runnin’」と並べると、同じ作者と編成でも、funk寄りの曲と直線的なrockを作り分けていることが分かる。
South City Midnight Lady
Patrick Simmons作。acoustic guitarとJeff Baxterのsteel guitarを中心に、速い二曲とは異なる時間を作る。声も強く押し出さず、旋律を長く保つ。
前期Doobiesを「豪快なrock band」だけで説明できない理由になる曲である。Simmonsのcountry/folk志向が、アルバム全体へ奥行きを与えている。
Clear as the Driven Snow
静かな導入から演奏が段階的に厚くなり、複数のrhythmとguitarへ展開するPatrick Simmons作。曲の途中で力の置き方が変わる。
single向けの短い構成ではないが、バンドの演奏力を知るには適している。大きな音を最初から最後まで続けず、変化を作れることが分かる。
Without You
メンバーの共作で、Tom Johnstonが歌う。guitarとdrumsを前へ出した簡潔なrockで、studio版にもliveの勢いが残る。
JohnstonとSimmonsの個別作だけでなく、バンド全体で一つの曲を押し切る力を示す。アルバム中央で再び速度を上げる役割も持つ。
収録曲
- Natural Thing
- Long Train Runnin'
- China Grove
- Dark-Eyed Cajun Woman
- Clear as the Driven Snow
- Without You
- South City Midnight Lady
- Evil Woman
- Busted Down Around O'Connelly Corners
- Ukiah
- The Captain and Me
ジャケットについて
画面の大部分を工事中のfreewayが占め、その下に西部劇の衣装を着たメンバー、馬、幌馬車を小さく並べる。Warner Bros.の映画用小道具を使い、Sylmar付近で撮影された構図である。
巨大な道路構造物と古い西部劇を同じ画面へ置き、Californiaの過去と現在を対比している。countryの要素と現代的なrockを組み合わせるアルバム内容を、説明文なしで見せている。
一般的な評価
アルバムはBillboard 200で7位を記録し、米国でダブル・プラチナ認定を受けた。「Long Train Runnin’」は全米8位、「China Grove」は15位となった。
前作『Toulouse Street』で得た支持を、二つの大きなsingleとアルバム全体の完成度へつなげた。前期Doobie Brothersの音を確立し、その後の変化を比較する基準になった作品である。
どんな人におすすめか
- 「Long Train Runnin’」をアルバムの流れで聴きたい人
- ツインドラムと複数のguitarがどう役割を分けるか聴きたい人
- Tom JohnstonとPatrick Simmonsの作風を比べたい人
- Little FeatやSteely Dan周辺の演奏者とのつながりに興味がある人
初めて聴くなら
まず「Long Train Runnin’」と「China Grove」で二種類のrhythmを比べる。次に「South City Midnight Lady」と「Clear as the Driven Snow」へ進み、Patrick Simmonsの静かな側面を聴くと、アルバムの幅がつかみやすい。
次は『What Were Once Vices Are Now Habits』で、Patrick Simmonsの「Black Water」がバンド初の全米1位へ至る流れを確認したい。後期との違いは『Takin’ It to the Streets』と『Minute by Minute』で比べられる。
関連ページ
- アーティスト: The Doobie Brothers
- アルバム: What Were Once Vices Are Now Habits
- アルバム: Takin’ It to the Streets
- アルバム: Minute by Minute
- 特集: ウエストコーストサウンド名盤10選
参考資料
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