What Were Once Vices Are Now Habits cover PR 楽天

What Were Once Vices Are Now Habits

発売
1974年2月8日
レーベル
Warner Bros. Records
プロデュース
Ted Templeman
ジャンル
Rock / Country Rock / Funk Rock

The Doobie Brothersの『What Were Once Vices Are Now Habits』は、1974年2月8日に発表された4作目のスタジオ・アルバム。日本盤では『ドゥービー天国』の題で知られる。前作『The Captain and Me』で確立したツインギターとツインドラムによる厚いロック・サウンドを保ちながら、フォーク、カントリー、ソウル、ファンクへと音の幅を広げた作品である。

最大の転機は、Patrick Simmons作の「Black Water」だった。当初は「Another Park, Another Sunday」のB面として出されたが、ラジオ局での支持から改めてシングル化され、1975年にバンド初の全米1位を獲得した。派手なロック曲ではなく、アコースティック・ギターと声の重なりを中心にした曲が最大のヒットになったことで、Doobie Brothersの別の顔が広く知られることになった。

まず押さえたい3点

  • 音の特徴: ギターとツインドラムの推進力に、ホーン、ペダル・スティール、ヴィオラ、各種パーカッションを加えた多彩なアメリカン・ロック。
  • まず聴く3曲: 流れるような「Black Water」、孤独を軽快な演奏で包む「Another Park, Another Sunday」、ホーンが前へ出る「Song to See You Through」。
  • おすすめする人: 「Long Train Runnin’」「China Grove」の勢いに加えて、前期Doobiesのコーラスとルーツ音楽への広がりも聴きたい人。

なぜ聴く価値があるのか

本作を聴く価値は、前期Doobie Brothersを単なる豪快なギター・バンドとして終わらせなかった点にある。Tom Johnstonの曲には、刻むギター、太いリズム、ソウルやファンクの感触がある。一方、Patrick Simmonsの曲は、フィンガーピッキングやペダル・スティール、風景を感じさせる歌詞によって、よりフォーク/カントリー寄りの空間を作る。

二人の作風は一枚の中で無理に統一されていない。「Road Angel」の走るロックから「Black Water」の素朴な響きへ、「Eyes of Silver」のホーンから「Daughters of the Sea」の広がりへと曲調が移る。のちのMichael McDonald期とは異なり、複数の作者とゲスト奏者を曲ごとに入れ替えて音の範囲を広げている。

『The Captain and Me』の成功後に広げた音

プロデュースは前2作に続いてTed Templeman。中心となるTom Johnston、Patrick Simmons、Tiran Porter、John Hartmanらに加え、複数のゲストが曲ごとに色を添えている。

Steely Danに在籍していたJeff “Skunk” Baxterは、正式加入前のゲストとしてギターとペダル・スティールを演奏した。Little FeatのBill Payneは鍵盤、The Memphis Hornsはホーン・セクションを担当。さらにArlo Guthrieのオートハープ、Novi Novogのヴィオラ、Milt Hollandの各種パーカッションが加わり、前作以上に編成が広がっている。

こうしたゲストは主役を奪うのではなく、曲ごとの輪郭を強めている。バンド本体の勢いを保ちながら、必要な場所だけ音色を足すTed Templemanの制作が、本作の多様さを散漫にしない支えになっている。

代表曲と聴きどころ

Black Water

Patrick Simmonsが書き、リード・ボーカルも取った本作の代表曲。アコースティック・ギターの反復、ヴィオラ、ペダル・スティール、ゆったりしたリズムが川の流れを思わせる。後半では伴奏が引き、メンバーの声が重なるア・カペラ部分へ移る。Doobie Brothersのコーラスの強さを最もわかりやすく聴ける場面である。

もともとシングルの主役ではなかった曲が、ラジオから支持を広げて全米1位になった経緯も、本作を象徴している。ヒットを狙った型より、バンドが持っていた自然な持ち味が聴き手に見つけられた一曲だった。

Another Park, Another Sunday

Tom Johnston作。明るく滑らかな演奏の下で、別れた相手を思い出す日曜日の孤独を歌う。力強いリフで押す「China Grove」とは違い、メロディとコーラスを前へ出したポップな曲である。

「Black Water」をB面に置いて先にシングル発売され、全米32位を記録した。後からB面のほうが大きなヒットになったが、この曲もTom Johnstonの作風がロック一辺倒ではなかったことを示している。

Song to See You Through

アルバム冒頭を飾るTom Johnston作。ギターとドラムの上にThe Memphis Hornsが入り、初期Doobiesのロックへソウルの色を加える。アルバムが前作の再現ではなく、編成とアレンジを広げようとしていることを最初の一曲で伝える。

Eyes of Silver

切れのよいリズムとホーンを軸にしたTom Johnston作。短いフレーズを積み重ねて進むため、ブギーというよりファンク寄りの感触が強い。「Black Water」と並べて聴くと、同じアルバムの中にある音楽的な距離がよくわかる。

収録曲

  1. Song to See You Through
  2. Spirit
  3. Pursuit on 53rd St.
  4. Black Water
  5. Eyes of Silver
  6. Road Angel
  7. You Just Can't Stop It
  8. Tell Me What You Want (And I'll Give You What You Need)
  9. Down in the Track
  10. Another Park, Another Sunday
  11. Daughters of the Sea
  12. Flying Cloud

Doobie Brothersの歴史での位置

アルバムはBillboard 200で4位を記録した。『The Captain and Me』の成功を受け継ぎながら、「Black Water」という新しい代表曲を生み、前期Doobiesの人気を決定的にした一枚である。

次作『Stampede』ではJeff “Skunk” Baxterが正式メンバーとして加わり、ギターとアレンジはさらに複雑になる。その後、Tom Johnstonの体調悪化とMichael McDonaldの加入によって、バンドは『Takin’ It to the Streets』でR&B/soul寄りの方向へ大きく変化していく。本作はその転換前に、JohnstonとSimmonsという二人のソングライターの対照が最も豊かに共存した作品の一つと位置づけられる。

こんな人におすすめ

  • 『The Captain and Me』の次に何を聴くか迷っている
  • 「Black Water」のコーラスとアコースティックな音が好き
  • 70年代のカントリー・ロックとソウルの接点を聴きたい
  • Michael McDonald加入前のDoobie Brothersをアルバム単位で知りたい

最初の一枚として即効性があるのは『The Captain and Me』だが、前期Doobiesの懐の深さを知るなら本作は外せない。勢いだけでなく、曲ごとに変わる楽器と歌声を追うことで、バンドが次の段階へ進む途中の姿が見えてくる。

参考資料

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