The Doobie Brothers
- 結成
- 1970年
- 出身
- サンノゼ, カリフォルニア
The Doobie Brothers(ザ・ドゥービー・ブラザーズ)は、1970年にカリフォルニア州サンノゼで結成されたバンドである。前期のギター・ロックと後期のR&B/AORで印象が大きく異なるが、複数の歌い手、厚いコーラス、二人のドラマーが生む推進力は一貫している。
まず押さえたい3点
- 前期と後期で中心人物が変わる ── 前期はTom Johnston、後期はMichael McDonaldの曲と声がバンドを大きく動かした。
- 一人のリーダーだけのバンドではない ── Patrick Simmonsの曲が両時期をつなぎ、異なる歌声が一枚の中で交代する。
- リズムの厚さが土台 ── ツインドラムとコーラスが、boogie、country、soul、R&Bを同じバンドの音にする。
先に4人の役割を整理
- Tom Johnston(トム・ジョンストン) ── 「Listen to the Music」「Long Train Runnin’」「China Grove」を書いた前期の中心人物。歯切れのよいギターと力強い歌声を担う。
- Patrick Simmons(パトリック・シモンズ) ── 結成時から活動を続けるギタリスト兼歌手。「Black Water」「South City Midnight Lady」など、folkやcountryに近い曲を持ち込んだ。
- Michael McDonald(マイケル・マクドナルド) ── 1975年に加入した歌手兼キーボード奏者。「Takin’ It to the Streets」「What a Fool Believes」でR&B色を強めた。
- Jeff “Skunk” Baxter(ジェフ・“スカンク”・バクスター) ── Steely Danから移り、前期と後期の移行期にギターと編曲面で貢献した。
1972–1975年: ギターとツインドラムの前期
2作目『Toulouse Street』で、Tom JohnstonとPatrick Simmonsという二人の書き手、John HartmanとMichael Hossackによるツインドラムの形が整った。「Listen to the Music」「Rockin’ Down the Highway」の軽快なrockに、Simmonsの「Toulouse Street」「Jesus Is Just Alright」が異なる色を加えている。
1973年の『The Captain and Me』では、「Long Train Runnin’」「China Grove」を軸に、ギターの反復、コーラス、厚いリズムが最も明快な形になった。前期Doobie Brothersを一枚で知るなら、まずこの作品が入口になる。
Patrick Simmonsがバンドの幅を広げた
Johnstonの曲だけを聴くと、Doobie Brothersは勢いのあるboogie bandに見える。しかしSimmonsは、アコースティック・ギター、fingerpicking、countryやfolkの感触を持ち込み、アルバムに速度差を作った。
『What Were Once Vices Are Now Habits』の「Black Water」はSimmons作で、バンド初の全米1位シングルとなった。曲の後半で声だけが重なる構成は、ギター・リフだけではないバンドの強みを示している。
1975年の『Stampede』では、Jeff “Skunk” Baxterが正式メンバーとなり、Johnston、Simmonsとの三本のギター編成になった。「Sweet Maxine」のrock、「Take Me in Your Arms」のMotown、「I Cheat the Hangman」のstringsを伴う長い展開までを収め、ギター中心の前期を締めくくった。
1975年: Michael McDonald加入で音が変わる
1975年、体調を崩したJohnstonの代役としてMichael McDonaldがツアーに参加し、そのまま正式メンバーとなった。McDonaldはSteely Danのツアーや録音で活動しており、低い声、キーボード、複雑な和音をバンドへ持ち込んだ。
この交代は、単にギター担当がキーボード担当へ変わったのではない。曲の作り方、リズムの置き方、コーラスの重なりまで変化し、1976年の『Takin’ It to the Streets』以降、soulとR&Bの比重が高まった。同作にはJohnston、Simmons、McDonald、Tiran Porterの曲と歌が入り、前期から後期への移行を一枚で聴ける。
1978年: 『Minute by Minute』で後期が完成
『Minute by Minute』では、McDonaldの声とキーボードを中心にした後期の音が完成した。「What a Fool Believes」はKenny Loggins(ケニー・ロギンス)との共作で、細かく動く鍵盤とリズムの上に、届かない思いを信じ続ける人物を描いている。
第22回グラミー賞では『Minute by Minute』が最優秀アルバム、「What a Fool Believes」が最優秀レコードと最優秀楽曲を受賞した。前期と音は大きく違うが、複数の声と精密なリズムで曲を動かす点では、Doobie Brothersの特徴が残っている。
前期と後期は別のバンドなのか
音だけを比べれば、「China Grove」と「What a Fool Believes」の距離は大きい。それでも、Patrick Simmonsは両時期に在籍し、ツインドラムとコーラスも継続した。Jeff Baxterのように両方の時期をつないだ演奏者もいる。
したがって「前期こそ本物」「後期だけがAOR」と分けてしまうより、複数の書き手を抱えたバンドが、メンバーの事情と時代に応じて重心を移したと見る方が全体像をつかみやすい。
再結成と『Walk This Road』
1982年にいったん解散した後、1987年にJohnstonを含む編成で再結成した。2019年にはMcDonaldもツアーへ復帰し、前期と後期の代表曲を同じ公演で演奏する体制になった。
2025年の『Walk This Road』にはJohnston、Simmons、McDonaldの三人がそれぞれ曲作りで参加した。公式サイトによれば、三人の主要ソングライターが一枚のDoobie Brothers作品へそろって曲を提供したのは初めてである。
最初に聴くアルバムはどれ?
- 初期の出発点から聴くなら ── 『Toulouse Street』。「Listen to the Music」とツインドラムの形が整う。
- 前期の代表作なら ── 『The Captain and Me』。「Long Train Runnin’」「China Grove」を収録。
- 曲調の幅を楽しむなら ── 『What Were Once Vices Are Now Habits』。「Black Water」を含み、三人の歌い手を聴き分けられる。
- 三本のギターと前期の到達点なら ── 『Stampede』。Jeff Baxter加入後のrock、country、Motownを一枚で聴ける。
- 前期から後期への変化を聴くなら ── 『Takin’ It to the Streets』。Michael McDonald加入後も複数の書き手と歌い手が共存する。
- 後期のR&B/AORから入るなら ── 『Minute by Minute』。「What a Fool Believes」を中心に、鍵盤、複数のコーラス、細かく刻むリズムが前へ出る。
参考資料
メンバー
- Tom Johnstonボーカル、ギター1970–1977, 1987–1948年8月15日カリフォルニア州ビセイリア生まれ。創設メンバーで前期ドゥービーズの中心人物。「Listen to the Music」「Long Train Runnin'」「China Grove」を書きリードボーカルを取った。1975年に重度の胃潰瘍で緊急入院し、その後も体調不良が続いたため1977年に脱退。1987年の再結成ツアーをきっかけに復帰し、以後バンドの活動を支えている。
- Patrick Simmonsボーカル、ギター1970–1948年10月19日ワシントン州アバディーン生まれ。創設メンバーで、全スタジオアルバムに参加した唯一のメンバー。バンド初の全米1位シングル「Black Water」や「South City Midnight Lady」を書きリードボーカルを担当。1983年にソロ作『Arcade』を発表し、2020年にバンドと共にロックの殿堂入り、2025年には作詞作曲家の殿堂入りも果たした。
- John Hartmanドラムス1970–1979, 1987–19921950年3月18日バージニア州フォールズチャーチ生まれ。創設ドラマーで、1971年に Michael Hossack が加わってからはツインドラム編成の片翼を担った。1979年初頭に脱退してカリフォルニアでアラビア馬の牧場経営に転じ、1987年の再結成で復帰したのち1992年の慈善公演を最後に音楽から完全に引退した。2021年12月29日に71歳で死去したが、バンドによる公表が2022年9月だったため当時は享年72と誤って報じられた。死因・場所は非公表。2020年にバンドの一員としてロックの殿堂入り。
- Michael McDonaldボーカル、キーボード1975–1982, 2019–1952年2月12日ミズーリ州ファーガソン生まれ。1974年から Steely Dan のツアー/レコーディングに参加した後、1975年に Tom Johnston の代役として加入し、そのまま正式メンバーに昇格。「Takin' It to the Streets」「Minute by Minute」「What a Fool Believes」(Kenny Loggins と共作、1980年グラミー賞ソング・オブ・ザ・イヤー) などでバンドを R&B/AOR路線へと導いた。ソロでも「I Keep Forgettin'」「Sweet Freedom」などをヒットさせ、2019年からツアーメンバーとして復帰している。
- Jeff "Skunk" Baxterギター1974–19791948年12月13日ワシントンD.C.生まれ。Steely Dan の創設メンバーとして最初の3作に参加した後、1974年に Doobie Brothers に加入し『Minute by Minute』までの黄金期を支えた。1979年初頭に Michael McDonald との方向性の違いから脱退。1980年代半ば以降は防衛コンサルタントに転身し、ミサイル防衛などで議会やペンタゴンに助言する活動でも知られる。2020年にバンドと共にロックの殿堂入り。
- Tiran Porterベース、ボーカル1972–1980, 1987–19921948年9月26日カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。1972年に2作目『Toulouse Street』録音時に Dave Shogren の後任として加入し、メロディアスで力強いベースラインでバンドのサウンドを支えた。コーラスが中心ながら「For Someone Special」「Need A Lady」などでリードボーカルも担当。1980年にツアー疲れで一度脱退し、1987–1992年に再加入。1995年にソロ作を発表し、2020年にバンドと共にロックの殿堂入り。
- Keith Knudsenドラムス、ボーカル1974–19921948年2月18日アイオワ州ルマーズ生まれ。1974年に Michael Hossack の後任として加入し、John Hartman とのツインドラム編成を支えた。バンド解散後の1980年代には John McFee とカントリーロック・グループ Southern Pacific を結成しヒットを放った。2005年2月8日、カリフォルニア州ケントフィールドのリハビリ施設にて肺炎により56歳で死去。2020年にバンドの一員として遺族と共にロックの殿堂入り。
- John McFeeギター、フィドル、ボーカル1979–1982, 1987–1950年9月9日カリフォルニア州サンタクルーズ生まれ。ギター・ペダルスチール・ドブロ・マンドリン・ヴァイオリンなどを操る多楽器奏者で、Doobies 加入前は Huey Lewis 在籍時の Clover に所属し、Van Morrison や Steve Miller、Grateful Dead などの作品にもセッション参加していた。1979年に Jeff Baxter の後任として加入。解散期には Keith Knudsen らと Southern Pacific を結成。2020年にバンドと共にロックの殿堂入り。
変遷
- 1970 サンノゼで結成(初期は Tom Johnston を中心としたパワー・トリオ)
- 1971 デビューアルバム『The Doobie Brothers』発表
- 1974 『What Were Once Vices Are Now Habits』発表。Jeff "Skunk" Baxter 加入
- 1975 『Stampede』発表。Tom Johnstonの体調悪化を受けてMichael McDonald加入
- 1976 『Takin' It to the Streets』発表。複数の書き手と歌い手が共存する移行期の編成を記録
- 1977 Tom Johnston 健康問題で脱退
- 1978 『Minute by Minute』発表
- 1980 第22回グラミー賞で『Minute by Minute』が最優秀アルバム、『What a Fool Believes』が最優秀レコードと最優秀楽曲を受賞
- 1982 解散
- 1987 Tom Johnston 中心の前期メンバーで再結成
- 2019 Michael McDonald がツアーメンバーとして復帰
- 2020 結成50周年でロックの殿堂入り
- 2021 創設ドラマー John Hartman 死去(2022年9月に公表)
- 2025 Tom Johnston、Patrick Simmons、Michael McDonaldの3人が曲を書いたアルバム『Walk This Road』発表
Discography
-
Toulouse Street
1972 -
The Captain and Me
1973 -
What Were Once Vices Are Now Habits
1974 -
Stampede
1975 -
Takin' It to the Streets
1976 -
Minute by Minute
1978
最終更新: