Takin' It to the Streets cover

Takin' It to the Streets

発売
1976年3月19日
レーベル
Warner Bros. Records
プロデュース
Ted Templeman
ジャンル
Rock / Blue-Eyed Soul / R&B

The Doobie Brothersの『Takin’ It to the Streets』は、1976年3月19日に発表された6作目のスタジオ・アルバム。日本盤題は『ドゥービー・ストリート』である。Michael McDonald(マイケル・マクドナルド)が初参加し、ギターとツインドラムを軸にした前期の音へ、キーボード、soul、R&Bの要素を加えた。

この作品は、Tom Johnston(トム・ジョンストン)からMichael McDonaldへ一夜で主役が交代したアルバムではない。Johnston、Patrick Simmons(パトリック・シモンズ)、McDonald、Tiran Porter(タイラン・ポーター)がそれぞれ曲を書き、異なる歌声を担当している。バンドが前期を捨てたのではなく、複数の書き手を生かして次の形を探した転換作である。

まず押さえたい3点

  • 作品の特徴: 前期Doobiesのギターとツインドラムを残しながら、Michael McDonaldの低い声、鍵盤、複雑な和音を加えた。
  • まず聴く3曲: 新しい方向を明示する「Takin’ It to the Streets」、陰影のある「It Keeps You Runnin’」、前期からの連続性が聞こえる「Wheels of Fortune」。
  • おすすめする人: 「Long Train Runnin’」から「What a Fool Believes」へ、バンドの音がどう移ったかを途中から確かめたい人。

なぜ聴く価値があるのか

1975年、Tom Johnstonが体調を崩し、Jeff “Skunk” Baxter(ジェフ・“スカンク”・バクスター)の提案で、Steely Danのツアーや録音に参加していたMichael McDonaldが代役として加わった。McDonaldは正式メンバーとなり、本作でリード・ボーカル、キーボード、ソングライティングを担う。

加入による変化は声だけではない。McDonaldの曲は、ギター・リフを一直線に押し出すより、鍵盤の和音と細かいリズムの上でメロディを動かす。それでもJohn Hartman(ジョン・ハートマン)とKeith Knudsen(キース・ヌードセン)のツインドラム、厚いコーラス、Patrick Simmonsのギターは残っている。

前期と後期を二つの別バンドとして聴くと見落としやすい、その接続部分が本作には記録されている。

Michael McDonaldだけのアルバムではない

表題曲と「It Keeps You Runnin’」の印象が強いため、本作はMcDonald加入作として語られる。しかし全9曲を聴くと、複数の書き手と歌い手が共存している。

Tom Johnstonは「Turn It Loose」などで前期らしい力強い歌とギターを残す。Patrick Simmonsの「8th Avenue Shuffle」「Losin’ End」「Rio」は、countryやfolkだけではない、軽快さと都会的な響きを持つ。ベースのTiran Porterは「For Someone Special」を書き、リード・ボーカルも担当した。

一人の新加入者がすべてを塗り替えたのではなく、既存メンバーが別の音に応答したことが、本作を単なる過渡期以上のアルバムにしている。

前期の推進力とR&Bの和音が交わる

Ted Templeman(テッド・テンプルマン)は、前作までのバンドの厚さを消さずに、鍵盤とコーラスの位置を変えた。タイトル曲ではMcDonaldのピアノと声が中心になるが、リズム隊は重く前へ進み、ギターも曲の輪郭を保つ。

「Wheels of Fortune」ではギター、ドラム、コーラスが絡み、前期Doobiesの荒さが残る。一方「It Keeps You Runnin’」では、鍵盤の反復と間を生かしたリズムによって、後の『Minute by Minute』へ続く音がはっきりする。

この二つが同じ一枚にあるため、変化を「ロックからAORへ」という一行で終わらせず、楽器と歌声の移り方として聴ける。

代表曲と聴きどころ

Takin’ It to the Streets

Michael McDonaldが書き、リード・ボーカルを取った表題曲。個人の悩みに閉じこもらず、声を上げて外へ持ち出すという内容を、重いピアノとツインドラムが支える。

McDonaldの低い声は従来のDoobiesと明らかに違うが、コーラスとリズムの厚さはバンドの持ち味を保っている。新旧の要素が最も分かりやすく交わる曲である。

It Keeps You Runnin’

鍵盤の反復、抑えたドラム、声の重なりで進むMcDonald作。勢いで押すのではなく、離れたいのに同じ場所へ戻ってしまう人物の迷いを、空間のある演奏で聴かせる。

後期Doobiesの洗練を先取りした曲だが、音はまだ完全に滑らかではない。バンド演奏の重さが残ることで、1978年の『Minute by Minute』とは異なる緊張感がある。

Wheels of Fortune

アルバム冒頭で、ギターとツインドラムが複雑に絡む。McDonald加入作だからといって、最初から鍵盤主体のバラードを置かず、前期から聴いてきた人にも連続性を示す曲順である。

表題曲と続けて聴くと、同じバンドの中で中心となる楽器と歌声が切り替わる瞬間が分かる。本作の性格を二曲で説明する導入になっている。

For Someone Special

Tiran Porterが書き、リード・ボーカルを担当した曲。ベーシストとしてリズムを支えるだけでなく、別の低い歌声とソングライティングを持つことを示す。

McDonaldの曲だけを追うと見えない、本作の多声性がよく分かる。Doobie Brothersが複数の歌い手を抱えたバンドであることを確認する一曲である。

Turn It Loose

Tom Johnstonの力強い声とギターが前へ出る。体調問題によって活動の中心から離れつつあった時期にも、前期Doobiesの核が録音に残っている。

表題曲と比べれば音の違いは大きい。しかしツインドラムとコーラスを通じて、アルバムから浮かずに収まっている。交代ではなく共存として本作を聴く根拠になる。

収録曲

  1. Wheels of Fortune
  2. Takin' It to the Streets
  3. 8th Avenue Shuffle
  4. Losin' End
  5. Rio
  6. For Someone Special
  7. It Keeps You Runnin'
  8. Turn It Loose
  9. Carry Me Away

一般的な評価

アルバムはBillboard 200で8位を記録した。表題曲と「It Keeps You Runnin’」はいずれも全米Top 40に入り、Michael McDonaldを加えた編成が商業的にも受け入れられた。

前期の代表作『The Captain and Me』や後期の『Minute by Minute』ほど一つの型にまとまってはいない。しかし、まとまり切っていないからこそ、Tom Johnston、Patrick Simmons、Michael McDonald、Tiran Porterの違いを一枚で聴ける。ギター中心の前期と、鍵盤とR&Bを軸にした後期をつなぐ録音である。

どんな人におすすめか

  • 前期DoobiesとMichael McDonald期の両方が好きな人
  • Steely Danからつながる演奏者と音の変化に興味がある人
  • 複数のソングライターとリード・ボーカルを聴き分けたい人
  • AORが完成する前の、ロックとR&Bが混ざる段階を聴きたい人

初めて聴くなら

まず「Wheels of Fortune」と表題曲を続けて聴き、前期の推進力からMcDonaldの声と鍵盤へ重心が移る瞬間を確認する。次に「For Someone Special」で別の歌い手を挟み、「It Keeps You Runnin’」へ進むと、本作が一人だけの加入作ではないことが分かる。

次は『Minute by Minute』へ進むと、ここで始まったR&B/soul寄りの方向がどこまで整理されたかを比べられる。前へ戻るなら『Stampede』で、Tom JohnstonとPatrick SimmonsにJeff Baxterを加えた三本のギターを確認したい。

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参考資料

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