『Stampede』は、The Doobie Brothers(ザ・ドゥービー・ブラザーズ)が1975年に発表した5作目のスタジオアルバムである。Jeff “Skunk” Baxter(ジェフ・“スカンク”・バクスター)が正式メンバーとなり、Tom Johnston(トム・ジョンストン)、Patrick Simmons(パトリック・シモンズ)との三本のギターが編成の中心に置かれた。
前作『What Were Once Vices Are Now Habits』の「Black Water」が全米1位となった直後の作品で、アルバムはBillboard 200で4位を記録し、ゴールドディスクを獲得した。一方で、Johnstonは同年のツアー中に体調を崩す。次作『Takin’ It to the Streets』でMichael McDonald(マイケル・マクドナルド)が加わる前、初期から続くギター中心の編成を記録した最後の一枚でもある。
まず押さえたい3点
- 三本のギターが曲ごとに役割を変える ── Johnstonのリフ、Simmonsのacoustic/country、Baxterのpedal steelとlead guitarが重なる。
- Motown、country、bluesを一枚に収めた ── 「Take Me in Your Arms」を除く10曲はオリジナルで、外部演奏家とhorns/stringsも加わる。
- 前期の完成形であり転換直前の作品 ── Johnstonが中心人物として全編に参加した最後のスタジオ作で、次作からMcDonald期へ移る。
Jeff Baxter加入で三本のギター編成へ
Baxterは前作の録音にも参加していたが、本作では正式メンバーとしてクレジットされた。Johnstonが反復するelectric guitarのリフと力強い歌を担い、Simmonsがacoustic guitarやfingerpickingを持ち込み、Baxterがlead guitar、pedal steel、編曲面を補う。
ただし三本が常に同じ音を厚くするわけではない。「Sweet Maxine」ではelectric guitarとhornsを前へ出し、「Neal’s Fandango」ではacoustic guitarとpedal steelの比重を上げる。John Hartman(ジョン・ハートマン)とKeith Knudsen(キース・ヌードセン)のツインドラムを土台に、曲ごとにギターの組み合わせを変えている。
Motown、country、bluesを曲ごとに切り替える
「Take Me in Your Arms (Rock Me a Little While)」は、Holland–Dozier–Hollandが書いたMotown楽曲のカバーである。太いbackbeatとhornsにBaxterのギターソロを重ね、Doobie Brothersの演奏へ置き換えた。本作でカバー曲はこれだけで、残る10曲はメンバーが書いている。
Bill Payne(ビル・ペイン)がkeyboards、Ry Cooder(ライ・クーダー)がslide guitar、Bobbye Hall(ボビー・ホール)がpercussionで参加した。「I Cheat the Hangman」ではstringsとhornsまで使い、boogie一辺倒ではない編曲を示す。曲調の幅は広いが、ツインドラムと複数の歌声がアルバムを一つにまとめている。
代表曲と聴きどころ
Sweet Maxine
JohnstonとKnudsenの共作。短いギターの応答、horns、ツインドラムが一斉に曲を押し進める。アルバム冒頭で、Baxter加入後の編成を最も直接的に示す曲である。
Take Me in Your Arms (Rock Me a Little While)
Motownで生まれた曲を、Johnstonのリードボーカルとrock bandの演奏で取り上げた。原曲の明快な旋律を残しながら、ギターソロと二人のドラマーで音圧を加えている。
I Cheat the Hangman
Simmonsが書いた6分を超える曲。静かな歌い出しから、Maria Muldaur(マリア・マルダー)のbacking vocal、strings、hornsを伴う後半へ拡大する。Johnston型のboogieとは異なる書き方が、同じアルバムに共存している。
Neal’s Fandango
Simmons作。acoustic guitar、pedal steel、keyboardsを組み合わせたcountry rockで、Baxterの加入が速いelectric guitarの曲だけに作用したのではないことが分かる。
Rainy Day Crossroad Blues
Johnston作のbluesで、Ry Cooderがslide guitarで参加した。外部演奏家を名前だけで呼ぶのではなく、その奏法を曲の中心に置いた一曲である。
収録曲
- Sweet Maxine
- Neal's Fandango
- Texas Lullaby
- Music Man
- Slack Key Soquel Rag
- Take Me in Your Arms (Rock Me a Little While)
- I Cheat the Hangman
- Précis
- Rainy Day Crossroad Blues
- I Been Workin' on You
- Double Dealin' Four Flusher
ジャケットについて
西部劇の一場面のように、馬に乗った一団が土煙の中を進む写真を使っている。Stampedeは家畜の群れが一斉に走り出すことを指す言葉で、画面の人物と馬がその題名をそのまま視覚化している。
countryやbluesを含む本作には合うが、内容は素朴な西部劇趣味だけではない。horns、strings、Motownカバーまで入った音を聴くと、ジャケットの古いアメリカ像と、編曲を広げていくバンドの対照も見えてくる。
前期の到達点と次作への転換
『Stampede』はBillboard 200で4位に達し、「Take Me in Your Arms」と「Sweet Maxine」がシングルとしてTop 40入りした。売上の面でも前作の成功を引き継いでおり、前期Doobie Brothersが失速して終わった作品ではない。
しかしJohnstonはツアー中に体調を崩し、Steely Danの録音やツアーに参加していたMichael McDonaldが代役として加わった。次作『Takin’ It to the Streets』ではkeyboards、soul、R&Bの比重が増える。そのため本作は、前期の完成形であると同時に、編成変更の直前を記録した作品と位置づけられる。
どんな人におすすめか
- 「China Grove」「Long Train Runnin’」に続くギター中心のDoobiesを聴きたい
- Jeff Baxter加入後の三本のギターを曲ごとに聴き分けたい
- rock、country、Motown、bluesが同居するアルバムを探している
- Michael McDonald加入前後の変化をアルバム単位で比べたい
初めて聴くなら
まず「Sweet Maxine」で三本のギターとツインドラムを確認し、続いて「Take Me in Your Arms」でMotown曲の置き換え方を聴く。最後に「I Cheat the Hangman」へ進むと、短いboogieだけではない本作の編曲が分かる。
前へ戻るなら『What Were Once Vices Are Now Habits』、次へ進むなら『Takin’ It to the Streets』を聴く。同じバンドが、ギター中心の編成からkeyboardsとR&Bを軸にした編成へ移る境目がつかみやすい。
関連ページ
- アーティスト: The Doobie Brothers
- アルバム: What Were Once Vices Are Now Habits
- アルバム: Takin’ It to the Streets
- アルバム: The Captain and Me
- 特集: ウエストコーストサウンド名盤10選
参考資料
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