ロギンス&メッシーナの『Sittin’ In』は、1971年11月に発表された最初のアルバム。正式なデュオのデビュー作として始まったのではなく、Kenny Logginsの初作品に、プロデューサーのJim Messinaが演奏者として「同席する」という企画だった。
ジャケットと当初の正式表記は『Kenny Loggins with Jim Messina Sittin’ In』。一枚限りの予定だった共演が好評を得て、二人はLoggins & Messinaとして活動を続けることになった。正式結成より先に録音されたため、二人が歌と演奏の役割を決めていく過程まで聞こえる。
新人の歌とMessinaの経験が出会った
MessinaはBuffalo SpringfieldとPocoを経験し、録音技術、編曲、演奏を理解していた。対するLogginsは、まだ自身のアルバムを持たない新しいソングライターだった。本作では両者の立場の違いが、そのまま長所として働いている。
「Danny’s Song」「House at Pooh Corner」にはLogginsの親しみやすい語り口があり、「Nobody But You」「Same Old Wine」「Peace of Mind」にはMessinaのカントリーロックとスタジオ制作の経験が表れる。どちらか一方の伴奏者になるのではなく、曲ごとに前へ出る人物が入れ替わる。
弾き語りからカントリーと長い打楽器曲へ
基本はアコースティック・ギターと二人のハーモニーだが、全編が静かな弾き語りではない。「Vahevala」では長い演奏と打楽器が高揚を作り、「Listen to a Country Song」ではカントリー、「Same Old Wine」では社会への視線を持つ重いロックへ進む。
静かな歌だけで終わらず、カントリー、ロック、長い打楽器の演奏まで入れた構成が、後のロギンス&メッシーナの基礎になった。Pocoから続くMessinaの演奏と、Logginsの新しい歌が曲ごとに前後を入れ替える。
代表曲と聴きどころ
Nobody But You
Messina作のオープニング曲。短く歯切れのよい演奏でアルバムを始め、二人の声が自然に重なる。Pocoに近いカントリーロックの感触を、より簡潔なポップソングにまとめている。
Danny’s Song
Logginsが兄Dannyの息子の誕生をきっかけに書いた曲。裕福ではなくても、家族と新しい命があれば幸福だという内容を、飾らないメロディで歌う。デュオ解消後もLogginsを代表する一曲となった。
Vahevala
フォーク調の歌から、打楽器と器楽演奏が広がっていく長めの曲。静かなコーラスだけでなく、ライヴバンドとしての躍動感を早くも示している。
House at Pooh Corner
Logginsが若い時期に書いた曲で、『くまのプーさん』の登場人物を、大人になる前の時間への郷愁と結びつけた。親しみやすい題材と、少し切ない感情が同居する。
Same Old Wine
Messina作。政治や社会への失望を扱い、アルバムの温かなイメージに重い陰影を加える。二人の音楽が穏やかなソフトロックだけではないことが分かる曲だ。
収録曲
- Nobody But You
- Danny's Song
- Vahevala
- Trilogy: Lovin' Me / To Make a Woman Feel Wanted / Peace of Mind
- Back to Georgia
- House at Pooh Corner
- Listen to a Country Song
- Same Old Wine
- Rock 'N' Roll Mood
初めて聴くなら
まず「Danny’s Song」と「House at Pooh Corner」でLogginsの曲を聴き、「Nobody But You」と「Same Old Wine」でMessinaの役割を確かめる。そのあと「Vahevala」まで含めて通して聴くと、二人が歌だけでなく演奏面でも組む理由が見えてくる。
より明るく整理された完成形へ進むなら『Full Sail』、ヒット曲よりアルバム全体の深さを聴くなら『Mother Lode』がおすすめ。
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