ロギンス&メッシーナの『Mother Lode』は、1974年10月に発表された4作目のスタジオ・アルバム。「Changes」「Be Free」「Brighter Days」などを収録し、前作『Full Sail』より内省的な歌と複雑なアレンジを前へ出している。
誰もが知る一曲を中心にしたアルバムではない。その代わり、LogginsとMessinaが曲とリード・ボーカルを分け合い、固定メンバーのハーモニーと長い演奏で一枚を組み立てている。
ヒット曲よりアルバム全体を聴かせる
『Full Sail』には「My Music」「A Love Song」のように、最初の一度で輪郭をつかみやすい曲があった。『Mother Lode』では、一曲の大きなサビよりも、曲調の変化と演奏の積み重ねを重視している。
「Growin’」の落ち着いた始まりから、「Be Free」の長い器楽部分、「Changes」の明快なメロディ、「Fever Dream」の緊張感まで、同じ調子の曲を並べない。聴きやすいソフトロックというデュオの印象を残しつつ、その内側にあるジャズ、ラテン、カントリーの要素を広げた。
Mother Lodeという題名
mother lodeは、鉱脈の中心や豊かな源泉を意味する言葉である。Kenny Logginsの公式サイトによれば、当時のバンドはカリフォルニア州OjaiにあるJim Messinaの牧場へ移り、次作のリハーサルを行っていた。その場所は「Mother Lode」と呼ばれていた。
金脈を思わせる題名だが、作品は成功を誇示する内容ではない。成長、自由、変化、時間といった主題を扱い、人気デュオになった後の自分たちを見直すような曲が並ぶ。
代表曲と聴きどころ
Growin’
Loggins作のオープニング曲。成長を題材に、控えめな始まりからコーラスと演奏を広げる。本作が勢いだけでなく、変化する心情を扱うアルバムであることを最初に示す。
Be Free
Messina作の長尺曲。歌の部分と器楽演奏が大きく展開し、ギター、ヴァイオリン、管楽器を含むバンドの力を聞かせる。ロギンス&メッシーナをポップなデュオとしてしか知らない人ほど印象が変わる曲だ。
Changes
Loggins作。題名どおり変化を受け入れる心情を、明快な旋律と柔らかなコーラスで歌う。アルバムの内省的な主題と、Logginsの親しみやすい作曲が最も分かりやすく重なる。
Brighter Days
Messina作。カントリー寄りの軽快な演奏で、考え込む曲が多い本作に前向きな動きを加える。Pocoから続くMessinaのギターと編曲感覚も聞き取りやすい。
Fever Dream
アルバムを閉じるLoggins作。落ち着いたソフトロックとは異なる緊張を持ち、夢と現実の境目が揺れるような演奏で終わる。作品全体を一度で解決せず、余韻を残す終曲である。
収録曲
- Growin'
- Be Free
- Changes
- Brighter Days
- Time to Space
- Lately My Love
- Move On
- Get a Hold
- Keep Me in Mind
- Fever Dream
『Full Sail』との違い
『Full Sail』は海や旅を思わせる題材と、親しみやすい曲を入口にできる。『Mother Lode』は曲の展開が長く、明暗の差も大きい。すぐ口ずさめる一曲より、演奏と曲順を含めてアルバムを味わう方向へ進んでいる。
初めてロギンス&メッシーナを聴くなら『Full Sail』か『Sittin’ In』が先でもよい。その二枚で二人の声に馴染んだあと『Mother Lode』へ進むと、人気曲の陰に隠れた音楽的な幅が分かる。
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