ロギンス&メッシーナの『Full Sail』は、1973年10月に発表された3作目のスタジオ・アルバム。「My Music」「A Love Song」「Watching the River Run」など、二人の親しみやすい歌がまとまっている。
『Sittin’ In』で出会い、1972年の『Loggins and Messina』で人気デュオになった二人が、ヒット曲とバンド演奏の両方を一枚に収めた。初めてアルバム単位で聴く人にも薦めやすい作品である。
明るい曲だけでは終わらない
タイトルと帆船のジャケットから、海辺の軽快なソフトロックを想像しやすい。実際、「Lahaina」や「My Music」には開放的な楽しさがある。ただし、それだけで全体を括ると本作の半分しか見えない。
後半には「Watching the River Run」の静けさ、「Pathway to Glory」の長い展開、「Sailin’ the Wind」の緊張感が置かれている。短いポップソングと、演奏をじっくり聴かせる曲を交互に並べた構成が本作の強みだ。
二人組ではなくバンドとして聴く
ロギンス&メッシーナの中心は二人の作曲とハーモニーだが、『Full Sail』では周囲の演奏者もはっきりした役割を持つ。Al Garthのヴァイオリンや管楽器、Jon Clarkeの木管、Larry SimsとMerel Breganteのリズム隊が、曲ごとに編成の色を変えている。
「Lahaina」の軽い揺れ、「You Need a Man / Coming to You」の長い連結曲、「Pathway to Glory」のドラマ性は、二本のギターだけでは生まれない。柔らかな歌を入口にしながら、演奏の細部まで聴き直せるアルバムである。
代表曲と聴きどころ
Lahaina
ハワイの町Lahainaを題材にしたLoggins作のオープニング曲。打楽器とコーラスが軽やかな流れを作る。観光地を説明する曲というより、土地の空気をユーモアのある言葉とリズムに置き換えた一曲だ。
My Music
LogginsとMessinaの共作。ロックンロールへの愛着を簡潔なサビにまとめた、アルバムで最も即効性のある曲の一つ。二人の声が掛け合い、ステージで観客と共有できる明快さを持つ。
A Love Song
Loggins作の短いラヴソング。大きく盛り上げず、まっすぐな旋律とコーラスで聴かせる。後にAnne Murrayにも取り上げられた、Logginsのソングライターとしての強さがよく分かる曲だ。
Watching the River Run
二人の共作による穏やかな曲。川の流れを見ながら立ち止まる感覚を、ピアノと柔らかなハーモニーで表す。本作の開放感を保ちながら、賑やかな前半から静かな後半へ橋を架ける。
Pathway to Glory
Messina作の長尺曲。静かな歌から厚いバンド演奏へ展開し、曲の途中で景色が変わる。ヒット曲だけでは分からない、編曲者、ギタリストとしてのMessinaを聴くための重要曲である。
収録曲
- Lahaina
- Travelin' Blues
- My Music
- A Love Song
- You Need a Man / Coming to You
- Watching the River Run
- Pathway to Glory
- Didn't I Know You When
- Sailin' the Wind
『Sittin’ In』『Mother Lode』との違い
『Sittin’ In』には、経験の異なる二人が初めて組む面白さがある。『Full Sail』では役割分担が自然になり、短い曲と長い演奏を一枚の流れとして整理できるようになった。
次作『Mother Lode』では、明るいシングル候補よりも内省的な曲と複雑なアレンジが増える。入口の分かりやすさでは『Full Sail』、アルバムの奥行きでは『Mother Lode』という違いがある。
初めて聴くなら
まず「My Music」「A Love Song」「Watching the River Run」の3曲を聴くと、明るさ、メロディ、ハーモニーの基本がつかめる。そこから「Lahaina」と「Pathway to Glory」へ進めば、リズムと長い演奏を含むバンドの幅も見えてくる。
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