Little Feat『Sailin' Shoes』案内 ── Lowell Georgeの個性が形になった1972年作

Little Feat『Sailin' Shoes』 は、1972年に発表された2作目。大ヒット作ではない。 しかし Lowell George のスライドギター、ねじれたブルース感覚、カントリーとR&Bが混ざるグルーヴは、 次作『Dixie Chicken』で前面に出るバンドの基本形をすでに示している。

「Willin'」が置くアルバムの芯

アルバムの芯にあるのは、やはり「Willin'」だ。 デビュー作にも収録されていた曲だが、『Sailin' Shoes』版では Lowell George 本人のスライドギターが前面に出て、 曲の輪郭がはっきりする。トラック運転手の独白のような歌詞、乾いたメロディ、意図的に力を抜いた演奏。 ここに Little Feat の「きれいすぎないアメリカ音楽」が凝縮されている。

「Easy to Slip」「Cold, Cold, Cold」「Sailin' Shoes」には、このアルバムの幅が見える。 ポップに聴ける曲もあるのに、予想を外すリズムの置き方や、ブルースの感触が残る。 ポップ、カントリー、ブルースのどれか一つに着地せず、曲ごとにリズムの重心をずらすのがLowell George期の特徴だ。

『Dixie Chicken』の前夜として聴く

Little Feat の代表作として名前が挙がりやすいのは、次作 『Dixie Chicken』(1973) である。 そこでは Kenny Gradney、Sam Clayton、Paul Barrère が加わり、ニューオーリンズR&Bやファンクの色が濃くなる。 それに比べると『Sailin' Shoes』は、まだ4人組時代のざらついたロック・アルバムだ。

ただし、次作で花開く要素はすでにここにある。 Bill Payne の鍵盤は曲にジャズ寄りの陰影を加え、Richie Hayward のドラムは普通のロックンロールより少し跳ねる。 Roy Estrada のベースは、後の Little Feat ほどファンクではないが、演奏全体を予想外の方向へ押し出している。 『Sailin' Shoes』は完成形ではなく、変化の途中を記録した一枚として面白い。

Lowell Georgeがルーツ音楽に加えた個性

Lowell George は、ブルースマンでもカントリー歌手でも、いわゆるハードロックのギターヒーローでもない。 スライドギターは鋭いが、歌はどこか人懐っこい。 曲はルーツ音楽に根ざしているのに、展開や言葉選びはひと筋縄ではいかない。 『Sailin' Shoes』の良さは、その中間的な立ち位置にある。

「Teenage Nervous Breakdown」や「A Apolitical Blues」には、古いロックンロールやブルースへの愛着がある。 しかし、そのまま懐古に向かわない。 どの曲も少しだけ角度がずれていて、聴き手を普通のアメリカン・ロックの場所に落ち着かせない。

Neon Parkが描いたケーキの靴

『Sailin' Shoes』は、Little Feat と画家 Neon Park の関係が本格的に始まる作品でもある。 ケーキのような靴、シュールな人物、上品さと不穏さが同居する画面。 音楽の中にある「アメリカ南部のルーツ」と「ロサンゼルスの遊び心」が、ジャケットでも視覚化されている。

Little Feat のアルバムは、音だけでなくジャケット込みで記憶されることが多い。 『Sailin' Shoes』以後もNeon ParkはLittle Featのジャケットを手がけ、奇妙で少し不穏な画面がバンドの視覚的な目印になった。

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※ アルバム情報は Warner Bros. 盤の基本クレジット、公開されているディスコグラフィー情報、 および各種音楽資料の記述をもとに整理しています。表記揺れや誤りがあれば About ページ記載の連絡先までご指摘ください。